トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『野上弥生子短編集』 岩波文庫

1885年生まれの小説家。『真知子』『秀吉と利休』など。 解説に漱石に作品をみてもらったことが書いてあった。漱石って教師をしていたからか、人を育てることが好きだったのかなと思う。近所の少年に英語を教えてくれと頼まれてちょっと教えてあげるエピ…

柳美里『JR品川駅高輪口』 河出文庫

「あなたは 死にたい人?」 SNSで知り合う自殺志願者たち。その小さな人の輪は首括りの縄に似ている。 家庭にも学校にも居場所の無い少女が、ゆるやかに締まっていくその輪の中で自分をみつめている。 「うざい」とか「アホちゃうか」とか冷たいことばも混ざ…

おならはOK?

「セックスアンドザシティ」でキャリーがビッグと居るときにおならをしてしまうシーンがある。キャリーは狼狽し、ビッグは笑う。 その数日後またやってしまう。「もう女としての緊張感がなくなってしまった」とキャリーは嘆く。しかし「いつまでもうじうじし…

「あきらめる」の考察

山崎ナオコーラさんが「あきらめる」という言葉が好きだと書いておられた。 私はあきらめるのが嫌いだ。変に意地っ張りなところがある。損切ができない。 ナオコーラさんはなぜ「あきらめれる」という言葉が好きなのかなと考えて、私なりに納得したのでそれ…

山崎ナオコーラ『文豪お墓まいり記』 文春文庫

ナオコーラさんが日本の近代文学の巨匠たちの墓参りをするという、ショートトリップエッセイ。都内や関東近郊のお墓が多いので、行ってみようかなという気にもなる。 文学案内だがガイドブックではなく、ナオコーラさんの身辺の話が適度にちりばめられている…

トンイ

脚本 キム・イヨン 監督 イ・ビョンホン 今、朝食時は「セックスアンドザシティ」、夕食時は「トンイ」を観ている。キャリーたちと朝食、トンイと夕食。まるで家族のようだ。U-NEXT、けっこういい。 今全60話のうち40話くらいまでトンイを観ている。以前…

柳美里『JR上野駅公園口』 河出文庫

後書きがすごく参考になった。天皇制とホームレスの対比にまで私は考えが及ばなかった。 P55 光は照らすのではない。照らすものを見つけるだけだ。そして、自分が光に見つけられることはない。ずっと、暗闇のままだ。 ホームレスになっている人には東北から…

チェーホフ『ワーニャ伯父さん・三人姉妹』 光文社古典新訳文庫

「ワーニャ伯父さん」 大学教授の義理の兄(妹の夫)のために領地を管理してせっせと仕送りしてきたワーニャ伯父さん。教授の娘(つまりワーニャ伯父さんの姪)と共に教授に尽くす半生だった。 ワーニャ伯父さんの妹は亡くなり、教授は再婚した若いエレーナ…

山崎ナオコーラ『かわいい夫』 夏葉社

山崎ナオコーラと柳美里との出会いは私の「2021年の出会い」ベストテンに入る。 その山崎ナオコーラ著で装画が(あの懐かしい)みつはしちかこ というエッセイ集。 この作家は読者との距離の取り方が絶妙だ。ポーズが素敵、と言ってもいいかもしれない。文体…

泉鏡花『夜叉が池・天守物語』 岩波文庫

泉鏡花の戯曲。 「夜叉が池」 人里離れた山中で寄り添うように暮らす百合と晃。寺はとうの昔に焼失しているが今も残っている鐘楼があり、その鐘を朝夕晩の三度つくことをなりわいとしている。それは村を水害から守る竜神との約束のためだった。鐘をつかない…

マン『トニオ・クレーガー』浅井晶子訳 光文社古典新訳文庫

この小説を知ったのは、北杜夫さんの青春の書としてだった。そのとき「トニオ・クレーゲル」となっていたので、クレーガーとあるのがどうもしっくり来ない。翻訳だとどうしてもこういうことになる。『赤毛のアン』も、私のアンは昔の村岡花子さんの訳であっ…

和田秀樹『70歳が老化の分かれ道』詩想社新書

60歳以上はひとからげになってる本が多い中で「70歳」という年齢に着目して述べられているところが斬新な気がした。 今は老後が長いし、老年の間での格差も大きい。デビ夫人のような女性がいる反面私のように年相応、順調に老いの坂を下っている人も存在…

志賀直哉『万暦赤絵』 岩波文庫

自選による23篇の短編集。 久々の志賀直哉だ。卒論に書こうと思って全集を買ったくらい、一時は好きだった。 ほとんど読んでいるはずなのだが、ほとんど思い出せない。どこに惹かれたのかも今となっては定かではない。半世紀近く経っている。もう初めて読…