都営浅草線の駅を出たとき、人の流れの濃密さにすぐ「これはいかん」と思った。
浅草、人が多すぎる。平日なのに。寒風吹きすさんでいるのに。いつもそこにあるのに。
本来ならお参りを先にするべきなのだが、お昼時の混雑を避けようと、速攻「並木藪」へ向かう。しかしもう既に行列が出来ていた。
少し待って店内へ。もちろん相席だ。天ざるを頼む。今日は車なので、いつもの「菊正樽酒」が飲めない。相席のおっちゃんが頼んだのを羨ましく見る。
そんなに蕎麦がすごいわけじゃないけれど、満席であろうとも、なぜか落ち着く店だ。
普通のまっとうな蕎麦。それがいい。
顔見知りの(こちらが覚えているだけだけれど)店員さんのいつものそっけない接客がいい。ちょっと怒ってんのかな、というくらいの物言いだけれど、分け隔ての無いクールな接客が「並木に来たんだ」と思わせる。
さてその後は浅草寺にお参り。仲見世は混雑で歩きにくいので横の通路をしゃかしゃか歩いて、線香を買う。常香炉での煙浴は欠かせない。
おみくじは一回目、二回目、共に凶。浅草寺らしくていいのだが、(約3割が凶だと言われている)今日は絶対いやだと思い、並べられているおみくじを取らなかった。二百円の損失だが、仕方がない。
浅草寺は諦めて、お隣の神社に行く。パワースポットと言われるだけあって、心が澄み渡る気がする。黒い狛犬も大好きなのだ。
ここのお参りは行列。しずしずと進んで、柏手を打つ。清々しい。
おみくじも良かった。絶対に自分が幸せでいよう、との決意が通じたのだと思う。
「浅草に来ることが休日」と杉浦日名子さんが書いておられたが、実感だ。人ごみに負けず、また来よう。