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『悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の協奏曲』 オトナの土ドラ フジTV

「悪魔の弁護人・御子柴礼司」 原作 中山七里  

               脚本 泉澤隅子 戸田彬弘

 

これは面白かった。

死体配達人と呼ばれた過去を持つ弁護士御子柴礼司が魂の救いを得るまでの物語。

まず要潤の御子柴礼司が魅力ある人物に仕上がっている。単なる悪役の魅力ではなく、罪を犯しながらも裁かれなかった自分と向き合おうとする切ない人生と得体の知れない不気味さを併せ持つ不思議な人物だ。

この人物に対して、最後には共感と理解すら感じてしまう。すごい脚本だなと思う。

黒いロングコートを着て現れる御子柴礼司は底知れぬ苦しみをシニカルな表の顔に隠して徘徊する。彼は自分の苦悩が理解されることを望むことすら自分に許していないのだ。

要潤が長身でスマートだからこそ、この人物設定が生きている。この役は要潤にしかできないと思う。

ベッキーの日下部洋子も健気でいい。世間の評判や過去の事件にとらわれることなく、自分の目でものや人を見ようとするピュアな女性だ。御子柴に男として惹かれているから盲目的に従っているというのではなく、自分というものを持っている。

人間にとって大切なのは、今、ここでの生き方なんだという訴えを体現している洋子は、とても魅力のある女性だ。母性のようなものすら感じられる。

彼女が御子柴を信じているということが、彼の罪を許さない岬検事の心を変容させるきっかけにもなっている。

それと、御子柴の両親が何があっても彼を愛していたという点に救いがある。両親もまた、彼を裁かない。最後に御子柴が再び弁護士として生きるよすがになったことの一つだ。

罪と罰という問題を投げかけ、底知れない人間の心の闇の中を旅させてくれるドラマだった。