2020-01-28 『鹿の王』 上橋菜穂子 角川文庫 綾瀬はるかがすてきだった「精霊の守り人」の原作者の作品だ。 文化人類学者だけあって、構築されている世界観が素晴らしい。豊かな自然、多様な人間の生活、支配、服従、自分を生きようとする力、などなど。ぐんぐん引き込まれる。『指輪物語』を思わせるスケールの大きさなのだ。 この表題の「鹿の王」の意味は仲間が生き残るために自らを犠牲にする存在だ。支配し、搾取する者ではない。いちばん優れた者でもない。ただ、自らそうしようと決めた者だ。 ヴァンが森の奥へ消えて行くラストは、生きることの意味を冷徹に見据えながらも希望を抱かせるものだった。