トマト丸 北へ!

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「言葉にできる」は武器になる 梅田悟司 日経出版

題名の「武器」は、他人をやり込めたり敵を屈服させるためのものではない。他人の心を自然に動かし、自分を強くするためのものだと思う。

 

説得力のある意見を表明するためには、まず自分の意見を「育てる」ことが必要だと著者は言う。自分の意見がなければ、何を表明するというのか。

そのためには、内なる言葉を意識すること、自分と対話することだと書かれている。

自分の本当の気持ちに丁寧に向き合うことが大切だ。さもなければ、本当の気持ちから出た言葉でなく、「あるべき自分」から発せられる建前が先行し続けることになる。

そこから、以下のことを考えた。

自分の本当の気持ちを無視したり踏みにじっていると、最後には「自分のほんとうの気持ち」が何か分からなくなってしまう。そして、自分の気持ちが分からないから他人の気持ちなど無意識のうちに軽く扱ってしまうようになるのだ。

そういう人は世の中をのし歩いているようで、実際は惨めな人なのだと思う。

そう言えるのは、私にもそういう傾向があるからだ。権力を得たりすることは無いが、大切な人の気持ちを傷つけてしまうことがある。自分の気持ちを無視していては、他人の気持ちに敏感になることなどできない。

人を説得するという以前の問題で、自分のほんとうの気持ちを否定してしまうと永遠に幸せにはなれないという気がする。

嫌なことを「うれしいです」と言ってしまう。それを続けていると、自分がほんとに嬉しいことが分からなくなってしまう。嫌なことを続けて、自分を虐め続けて。

そうすると、どんどん自分が弱くなっていく。

だから、自分の言葉の力を強くするステップ1は、著者の言う通りで、自分の気持ちと丁寧に向き合うこと。

今食べたいもの、とか、これが楽しい、これは楽しくない、とか、小さいことから始める。自分の気持ちと違うことは断固として排除していく。対外的には表明しなくても、自分の中ではきちんと把握し理解しておく。

食事に誘われて、皆がおいしいと言って食べているとき、自分はそう思わなくても、わざわざ「おいしくない」とは言わなくていい。でも、ことさらに「おいしい」と同調することもないのだ。

私の場合、まずこういうことから始めようと思う。

 

単なるコミュニケーションのスキルを述べた本ではなく、内容が深い。繰り返し読む本。