となりの「愛犬バカ」 勝俣和悦著 祥伝社新書 2008年刊
様々な「愛犬バカ」の生態が描かれているが、飼い主が本当にバカだと犬は微笑ましさを通り越して悲惨だ。その意味で、自戒の一助となる書である。
中でこの一行がくっと胸に入った。
「ふだんの生活の中で、犬だけに対して愛情を伝え、愛情を注ぐのであれば、肝心の人と人との関係はどうなっているのか。」
人との関係を放棄して犬だけに愛情を向けるのは正しいことではないと言っているのだと思う。それは、「愛犬バカ」への道でもあるのだろう。
犬は人間の代わりではないし、歪んだ人間関係の家庭で飼われることはけっして幸せとは言えない。犬そものの取り扱いもおかしくなってくるのではないか。
このことばが刺さったのは、もちろん私がそれに近いことをしているからだ。
家人が嫌になったとき、ことさらに犬を可愛がったり、する。あてつけのようなことをする。「おまえは良い子だねえ、嫌なことを言ったりしないもの!」と聞えよがしに言うなど。
ほんとに犬を幸せにしようと思ったら、穏やかな家庭で育ててやるよう努力するべきなのだ。
犬と人との関係の在り方について考えさせられる本だ。