トマト丸 北へ!

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35歳の少女

2020年10月~

日本テレビ系列

脚本 遊川和彦

主演 柴咲コウ

 

遊川和彦脚本なので、絶対に観ようと決めていた。

もちろん柴咲コウさんも大好きな女優だ。

35歳の少女という設定から、彼女がトリックスターとなり、周囲の人間たちを変えて行くハッピーなストーリーだろうと想像していたが、それほど単純なものでもなさそうだ。

人って、そう簡単には変わらない。

25年間の眠りから目覚めた望美。彼女がたしかに周囲を変えて行くのだが、25年かかって覚醒した望美と同じように、父も母も家族たちも、積み重ねた年月の重みによってぐぐっと方向転換していくのだと思う。

「時」が、人間には必要なのだ。長い長い「時」が。

望美というキャラも一筋縄ではいかない。

事故の時十歳だった望美は、少女と言っても子どもではない。十歳と言えばあるていど人格が完成されている年齢だ。そこらのおばさん・おじさんより成熟している子も多い。

そして子どもとしても相当変わっている。アナウンサー志望である彼女の「インタビュー」の録音が時々再生されるが、まったく無邪気な子どもとも言い切れない洞察や切り口を見せているのだ。

一途で突飛であり、底知れないものを持っている。それが望美だ。

期待を裏切らない面白さと心に引っかかる内容と。この引っかかる部分がないと、ドラマはつまらないのだ。

そして鈴木保奈美。老けたメイクをしていても、こわばった表情を作っていても、ほんとにキュートで可愛い。不気味可愛い、なんて鈴木保奈美にしか作れないキャラだと思う。

望美の妹愛美の橋本愛も、いい。ほんとうまいなと思う。演じ方によっては薄っぺらいスタンダードな女になってしまうところだが、ほんの少しのいじらしさを加味して、観ている人の心をつかむ。

最後に「結人くん」の坂口健太郎がセクシー。愛美ならずとも、「ハグして」と言いたくなる雰囲気を持っている。

彼には、けっしてムキムキになることなく、しゅっとしたままで年を重ねてほしい。

この「35歳の少女」と「先生を消す方程式」と「さくらの親子丼」の三本があるので、土曜の夜が楽しみなのだ。