トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

28DAYS

 

ネットフリックスで観た。

監督 ベティ・トーマス

主演 サンドラ・ブロック

 

アル中の描写、さもありなん。

あのサンドラ・ブロックが、どうしようもない自堕落なアル中を演じている。やっぱり女優さんってすごいな。

車で人の家に突っ込んで、刑務所に行くか矯正施設に行くかを選ばざるを得なくなり入った施設での28日間で、グエンは変わっていく。アル中の母親にネグレクトされて育った心の傷、姉との確執が、しだいにほどけて行く。

印象的な場面は二つ。

一つはグループセラピーで、他の患者たちに糾弾されて、初めて彼女が自分の心の叫びを表に出した場面。彼女への攻撃は本音を引き出すためにわざと巧まれたものだったが、やっとのことで自分と向き合うことができた彼女は、更生への第一歩を踏み出した。

とてもよくわかる。たとえば私が過食だったりするのも、自分の心と向き合うこと避けてきたからだと思う。

傷ついても抗議するどころか、こんな小さなことどうでもいいとスルーしてきた。誰よりも大切な自分自身の感情を自分で踏みつけにしていた。

そういう人間に対して多くの人がどんなに残酷な扱いをするか、やられた人間でなければ分からないだろう。

グエンも、唯一の保護者である母親を非難することができなかった。彼女にできるのは、自分を攻撃する、粗末にする、無茶苦茶に扱うことだけだったのだ。

グループセラピーの場で、ようやく彼女は自分に正直になれた。感情を爆発させることができた。それが、第一歩。

もう一つ印象に残った場面は、酒と女で身を持ち崩したピッチャーがグエンに投げ方を教えるところだ。

エディを演じていたのが、『ロードオブザリング』のアルゴラン役のヴィゴ・モーテンセン。その美しい瞳! 「女を見るとだめになってしまう」という告白さえも気高く感じてしまうのは、指輪物語の後遺症かもしれないが。

それはともかく、彼はグエンに「ボールを投げる先を見てはだめだ」と教える。ボールが手の中にある間は自分で努力してフォームを作ることができる。だが、ボールが手から離れた後は、もうどうにもならない。先を考えてはだめだ。先を考えると、目標が脅威になってしまう、と。

これも、すごく共感した。

一時俳句を作ったり物を書いたりすることができなくなっていた。評価が心配で、だれにも受け入れられないのではないかと恐れて、足がすくんでいた。「先」を考えて目標が脅威になってしまう。まさにその通りだと思う。

できるのは精魂込めて作品を作ること。それだけなのだ。それ以上のことは、自分の問題ではない。作品を読む他者のタスクだ。

同じだな、と思う。

そして、自分の悩みは、けっこう同類が存在する悩みだったんだなと、この映画を観て思った。