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フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか 堀内都喜子著

フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか

              堀内都喜子著 ポプラ新書

 

ワークバランス世界1位、やりたいことはやるが、でもゆとりがある国フィンランドで暮らしたことのある著者がその働き方や考え方をレポートした本。

仕事のやり方についての記述がメインになっているので、無為徒食の私には少しお門違いだったが、面白く読めた。

共感する部分もいろいろあったが、「日本ほどきっちりと料理する習慣がない」というのは、いいと思った。

日常の料理はササっと作ればいい。食事が楽しいのは手が込んでいるからじゃなく、よい素材のものを仲良く楽しく食べるからだ。

ネットで夫に「買ってきた刺身を容器ごと食卓に出されるのなら、結婚した意味がない」と言われたという記事が載っていたが、しゃらくさい。通常お刺身の容器はお皿みたいな模様がついていて、つまなどと美しく盛り付けられていて、そのまま食卓へどうぞ、という風情で売られているのだ。忙しい主婦がわざわざ盛り付けなおす必要などない。

料理が趣味という人はどんなにでも時間と手間をかければいいが、そうでない人にとっては料理も単なる家事の一部。効率よくこなして自分の好きなことに時間を使うのが正しい。掃除機を使わずに箒とちりとりで掃除する、野菜を買わずに庭先に畑を作る、魚は朝早く漁に出て取ってくる、鶏、豚なども飼って卵、肉を得る。好きでどうしてもやりたいなら自由だが、それが仕事ではない人間がそんなことする必要ないだろう。

興味深いのは、フィンランドの歴史だ。国として独立を維持するのに長年の戦いがあったことを知り、感銘を受けた。

フィンランドの面積は日本とほぼ同じくらい。人口は北海道ほどだそうだ。

フィンランドの企業で名前を知っているのは、ノキアマリメッコくらい。

100年前まではスウェーデンとロシアに支配される貧しい国だったという。

1917年にロシアからの独立を宣言したが、もちろん戦争になる。その後第二次大戦の敗戦国なって多額の賠償金を支払うはめになったが、頑張って復興し、1952年にはヘルシンキオリンピックを開催したのだ。

人に歴史ありというけれど、国にももちろん歴史がある。独立を勝ち取り、そのために血を流している。

シス、という独特の頑張り精神もこういう歴史を背景に培われたものなのだ。