H・Rミラー画
アンシア、ジェイン、ロバート、シリルの4人の兄弟が砂の妖精サミアドに会い、願いを叶えてもらう話。4人の下にも赤ちゃんがいるが、大切にされてはいるものの発言権はないようだ。
砂の妖精が叶えてくれる願い事は毎日一つずつ、そして実現した願い事は日が暮れると消えてしまうというきまりになっている。
子供たちはあれこれと知恵を絞って願い事を考えるが、ご多分に漏れずなかなかうまくいかない。サミアドはかなりの曲者なのだ。
子供たちの描写が生き生きとしてとても面白いのだが、作者イーディス・ネズビットという人物も面白い。
デイジーと呼ばれた活発な少女は両親と放浪のような旅行生活を送り、すばらしい詩人になることを夢見、波乱の結婚をし、自分のおなかを痛めた子、そうでない子も含めて5人の子供を育て、社会改良活動にたずさわり、40から子供の本を書き始め、成功し、戦争を経験し、生活が苦しくなり、夫と死別し、再婚し、静かな晩年を送った!
作品を読んでも、経歴を読んでも、自由な魂の持ち主だったことがうかがえる。
百年も前にこんな女性が生きていたんだと思うとうれしくなる。
石井桃子さんの訳もいい。
私の子供時代は、石井桃子さんや村岡花子さんの文章を食べて育っていた。幸せだったと思う。