1月号だが、昨日読んだので、今日書く。連れ合いの本立てにあるのを発見したのだ。
村上さんのインタビューを読んで、小説を読んだときと同じように触発されて色々考えた。
私が村上さんの小説を読むのは、ただ面白いからではなく、何かを教えてくれるからでもなく、小説を読むことによって心の深いところまで降りて行って考えることを可能にしてくれるからだ。
P74 「起こったことをいったん自分の意識の中に沈めて、それがどういう形で出てくるか見定めるというやり方」
村上さんは小説を書くとき、どちらかというとこういうやり方を好むと言われていた。
村上さんの小説を読むとき、読者もこんな感じなのではないかと思う。がんがん読み進んだり、ひとつひとつ意味を考えたり、しない。文章をいったん意識の中に深く沈めて、それが自然に浮かび上がってくるのを待つような、読み方だ。
このインタビューを読んで考えたこと五つ。
①コロナは個別の事象ではない。世界を変えていくさまざまな要因の一つなのだと思っている。
世界は変わっていく。ITや気候変動や、ポピュリズム、グローバル化… 要因は複数でとらえどころがない。しかしとにかく、物事は変わるし、それを嘆いても変わることは止められない。そういう変化の中に私たちの生はある。
コロナがなければ良かったとか思っても仕方がない。ほかの多くの要因と同じく個人には止められないのだ。それがあること。それによって世界が変わることを受け入れるしかないのだと思った。
②少なくとも今はみんな、すでにあるシステムを死守しようとしている。既得権益を持つ人は、どうしてもそこにしがみつきますから。だけどどうやっても変わらざるを得ないと思う。
既得権益、大小さまざまあるけれど、たとえそれがちっぽけなものであっても、本当はあまり意味のないものであっても、人はそれにしがみつく。小さな町内会、ボランティアや趣味のグループの中でも、そうだ。もっと上の方の大きな権力を持つ人はなおさらだろう。
既得権益にしがみついているうちに、本当に自分にとって大切なものは何か、分からなくなってしまうのではないだろうか。知らない間に自分の掌からサラサラと滑り落ちているものに気づかない。気が付いたときは手の中に糞のようなものを握りしめて一人で佇んでいたりして。ふと気づくと周りは見も知らない世界になっていたり。
③これだけ混乱があるわけですから、みんなそれぞれに何らかの間違いを犯すと思います。自分だけは全て正しいことをしたなんて言える人はいないはずです。だから、間違わないことではなくて、その間違いに対してどういうふうに一人一人が対処していくのか。
これはほんとにそうだと思う。そしてちょっと飛躍するかもしれないが、自分は自分であると腹を括って、間違いを恐れずに行こうと思う。先へ進まなければ結局何が間違いかも分からないから。
④これからも書き続けます。書き続けていれば、何か出てくるかもしれない。書かなければ、何も出てこない。書き続ける。それしかないのです。
カッコいい! と思い、なぜか個人的に希望が湧いてくるように感じた。
これからももっと村上さんの小説を読み続けることができるという希望でもあるが、それだけでなく、村上さんという小説家が同時代に生きて書き続けている、という、その存在自体が希望なのだという気がしている。
⑤P77 「記者としては、コロナ禍のような事態になると、シングルマザーや学生などの未来ある若い人により多くの痛みが生じることにどうしようもなさを感じます」
「うん、うん、そうだね」
このやりとり、とても好きだと思った。