道の駅で買った白菜は無農薬だったらしい。虫の糞がいっぱい付いていた。そして見つけた黒い幼虫。
子供のころキャベツ畑で青虫を取って虫かごに入れ、蝶々になるまで飼って楽しんでいた。むしゃむしゃと葉っぱを食べる青虫が可愛く、羽化して羽根が伸びて行くのを眺めたり、成虫を外へ放しに行くのが好きだった。
それを思い出してこの虫を飼ってみようと。黒い色が何か不吉ではあるが、とにかく蝶か蛾か、そんなものだろうと考えた。どんな成虫になるのか楽しみだ。苺のケースに白菜を何枚か入れ、ラップで蓋をして空気の入る隙間も開けて。明日は虫かごを買いに行こうと思っていた。
ラムと名付けた幼虫は始めは丸く縮こまっていたものの5分もするとすっかり新しい住処に慣れて黙々と葉を食んでいるようす。安心しきった姿に愛情を感じ始める私。
でもここで理性が働いた。やはり正体不明というのはいかがなものか。
ネット社会はありがたい。「白菜に付く黒い虫」で検索してみるとすぐに出てきた。
カブラハバチ。「カブラの葉を食べる蜂」の意味でアブラナ科全般の葉物に付く。成虫の蜂が葉肉の間に卵を産み付け、孵化した幼虫がやわらかい葉を中心に食害する。「なのくろむし」とも呼ばれる。
害虫なのだ。しかも蜂。画像で見てもほんとに蜂だ。ごめんね。速攻苺のケースごとビニール袋に入れて生ごみにしてしまった。彼はきっと、一度は助けたくせにと人間不信に陥っただろうと思う。
でも、無農薬の新鮮野菜はやはりうまい。ふだん生野菜など食べないうちのマル君も先っぽの柔らかいところをかじっていた。