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ヒューゴの不思議な発明

 

ヒューゴの不思議な発明 [Blu-ray]

ヒューゴの不思議な発明 [Blu-ray]

  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: Blu-ray
 

 映画は雪が降りしきる1930年代のパリの俯瞰から始まる。カメラは上空の映像からだんだんと降りて行き、やがてモンパルナスの駅へ。駅舎の中を滑るように進み大時計へとたどり着く。大時計の文字盤4の後ろに見える少年、それがヒューゴ・カブレだ。

ヒューゴは孤児だ。博物館に勤める優しい父親が火事により不慮の死を遂げた後、駅で時計のメンテナンスをしている飲んだくれの伯父に引き取られるが、その伯父も行方不明になってしまった。ヒューゴは伯父の代わりに時計のメンテをしながら駅の屋根裏に住み続ける。そこには時計の機械や駅を動かしている動力機関、そして父の形見とも言うべき精巧な機械人形があった。

機械人形は、壊れて博物館の片隅に放置されていたのをヒューゴの父が修理していたものだ。ヒューゴはその人形が再び動くのを楽しみにしていた。

孤児のヒューゴが駅に住んでいることは誰も知らない。器用なヒューゴが時計をきちんと動かしているので、伯父が働き続けていると思われているのだ。食べていくためにはかっぱらいのようなことをするしかなかったし、服は汚れて小さくなりすぎている。しかし父の愛を享けて育ったヒューゴは誇りを失わず、機械人形を動かすことを夢見て必死に生きている。

ヒューゴの敵鉄道公安官、花売りやカフェの女主人など駅で働く人々がヒューゴのまなざしで描き出される。その中におもちゃ屋の主人とその養女のイザベルがいた。おもちゃ屋の主人がヒューゴの大切な手帳を取り上げたところから物語が動き始める。機械人形の謎と人形を動かすための鍵をヒューゴは見つけることができるのだろうか。

機械人形の謎と共に創成期の映画の歴史が語られるのも、とても興味深い。最初のころの映画「汽車が駅に到着するところ」の映像やそれを観て驚く観客たちには笑ってしまった。

ヒューゴの困難に満ちた生活にハラハラする。イザベルの美しさと明るさに魅了される。そして機械人形の不思議さ、精巧さ。登場人物たちへの優しいまなざし。あふれる映画への愛情。冒頭から始まる映像の美しさ。とても魅力的な映画だ。

ただ、邦題の「ヒューゴの不思議な発明」は、ちょっと変。機械人形はヒューゴが発明したものではないし、彼が作ったわけでもない。(原題「HUGO])

監督 マーティン・スコセッシ

ヒューゴ エイサ・バターフィールド

イザベル クロエ・グレース・モレッツ