トマト丸 北へ!

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ある日蕎麦屋で「お元気ですね」「おいくつですか」に微量だがむかついた話

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行きつけと言ってもいい蕎麦屋へ行くと店の前にひとりの男が立っていた。昼時だし順番待ちかと尋ねてみると、「ここ、おいしいですかね」と言う。もちろんおいしいですよと請け合って、相席する流れに。

その人がおいしいと思ったかどうか気になってちょっと顔を見たら、「おいしいです」と言う。それから彼は急にしゃべりだし、昔このあたりに住んでいたこと、亡き両親との思い出をたぐってこの街を訪れたらしいことがわかった。殊にお母さまへの思いが強いようだった。

この街の昔のありさま、銭湯や天ぷら屋や父母と歩いた街並みなどの話、追慕の念等々をしみじみと聞いていたら、やおら私の顔を見て、

「おいくつですか」と言う。

ちょっと鼻白んで、「内緒ですよ」と答えると、笑って、

「お元気ですねえ!」と感嘆した。

77歳で亡くなられたお母さまと重ねられても……。それにその言い方。「お」のついた「いくつ」、「お」のついた「元気ですね」。

複雑な気持ちになった。

怒る訳にもいかず、ささっと蕎麦をたぐって席を立つ。ああもう、こういう応対にも慣れなくてはならない年に私はなっているのだという感慨を胸に店を出る。その男はじゃっかんの取り残され感をかもし出しつつ見送ってくれた。

もっと話を聴いてあげれば良かったかな。私、気持ちだけまだ若いのだと気づいた。