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ドラマ『コールドゲーム』最終回 「なんとしても生き抜こう」に共感

小松江里子オリジナル脚本の「コールドゲーム」が終わり、「なんとしても生き抜こう」というメッセージが心に強く残った。めっちゃおもしろかったな。

隕石の衝突により地球に氷河期が訪れた。-45度の世界。ドラマの舞台は第七支部と呼ばれる小学校。そこに百人足らずの人々が身を寄せ合っている。そこでは支部長如月のモットーにより家族が重要視され独身の男たちは肩身の狭い思いをしていた。

ドラマの中心となるのは父母兄妹の4人家族である木村家。しかし実は木村家は支部長の家族重視の方針に沿うためにどさくさに紛れて結成した偽装家族なのだ。

いつ救援が来るかもわからず物資の不足する第七支部で、助け合ったり争ったりいがみ合ったり、みな生き抜こうと必死の毎日を送っている。

発電や野菜作り、少し離れたスーパーへ決死の覚悟で向かう物資調達隊、それぞれの仕事の分担など、この小さな社会の仕組みがおもしろい。そしてもっとおもしろいのが、ずるかったり、思いやりがあったり、だましたり騙されたりの人間模様だ。笑ってしまうし、身につまされもする。

木村家のママ木村祥子は市役所の窓口係だったと自称しているが、どこか謎めいている。弁が立ち、頭も相当キレるし、度胸もある。

彼女を演じている羽田美智子が好きな女優さんなのでこのドラマを観始めたのだ。すごくはまり役だと思う。元詐欺師の祥子が「トラスト ミー」と相手の目をのぞき込むと、相手は魅入られたように言いなりになってしまう。なんども繰り返されるその場面が好き。生き別れた幼い息子に会いたいという願いもあり、彼女は誰よりも生きることにどん欲だ。そこもいい。

あと好きなのは、一人暮らしの老女長嶋椿。彼女は祥子が過去に罪を犯して服役していた事実を知っており、ばらすと脅してお菓子や化粧品を持ってこさせたりする食えないばあさんなのだが、その小ずるいしたたかな生き方も愛嬌がある。

全8話の各回どれもおもしろかったが、特に最終回は、ほとんどすべてのエピソードが謎解きや伏線の回収になっていてめっちゃ良かった。祥子の母の愛にはじんとするし、選ばれて救出第一陣(二陣があるかどうかはわからない)となった8人(実際には9人)を見送る人々の温かさもすてきだった。

救出のヘリコプターが去った後、人々はたくましくまた新たな生活を始める。人々に糾弾されたり憎まれたりしていた人たちも、しぶとく新しい支部長選に立候補したりするのだ。そこがいちばん良かった。

家族の中であまり信用がなく軽んじられていたお父さんが、実は家族を思って行動していたこと、実は海洋研究所の研究員というこれからの世界に不可欠な人材だったことが判明したのも良かった。

大輝が胸のすく蹴りを入れ、悪事を暴いて恋人の復讐ができたこと、さわやかな気持ちになれたことが良かった。

陽菜が「家族」からの愛を胸に新しい出発ができたことも良かった。椿おばあちゃんとの別れのシーンには泣けた。

ゆうとが実の母のことを忘れていなくて良かった。ポケットから取り出したマグネットが泣かせる。

「なんとしても生き抜こう」というメッセージが心に響いた最終回だった。