両親がそろって、それぞれ別の相手と駆け落ちしてしまった双子の 直と哲。
これって、でも子供にとっては楽しみな境遇かも知れない。中学生になれば親なんかもうそれほど必要じゃない。自立と自由。大人が居なくなった家の楽ちん感が行間に漂っていると感じた。
しかし困るのが経済的なことと子供だけだとばれたら他の大人たちが介入してきてしまうこと。まだ自分たちで生活費を稼ぐことはできないし、中学生が自活するなんて許されないのだ。
そういう双子のニーズを満たす男が裏庭に降って来た。「俺」は、双子の隣の家に泥棒に入ろうとして失敗した男。双子は「俺」の弱みと人の好さにつけ込んで、父親代理という利用することにした。
泥棒だがヒューマニストでもある「俺」には仕事を斡旋してくれる「柳瀬の親父」と呼ぶ人物がいるが、双子はこの男とも親しくなってしまう。そういう、したたかで利口なだけでなく人好きのする双子なのだ。
設定だけで楽しくなっちゃう小説だ。謎解きの要素も極上で、安心して楽しめる一冊。