10話からなり、十個の「相談」が書かれているがどれも痛快なアドバイスだ。中島ハルコはべたべたと同情したり、「その人の身になって考え」たり気持ちに寄り添ったりしない。すべて一刀両断、言いたいことを言いまくる。それでいて感謝されファンが離れないという、それが中島ハルコ。
テレビドラマで大地真央がハルコ、松本まりかが菊池いずみを演じたが、ぴったりのキャスティングだった。この二人を思い浮かべながら読んだのでいっそう楽しかった。
ドラマとの違いは、ドラマの大地真央さんがあまりにも堂々と美しいのに対して本の中のハルコは生身の人間で多少の哀愁が漂っているというところだ。普通は逆だと思うのだが、大地真央さんだから。
ハルコの魅力は覚悟を決めて生きているところだ。けち臭くない(ケチだけれど)。だからわがままを通しても、言いたい放題言っても好かれるのだ。痛快で、側に居るだけで運気が上がる女でもある。
パリで偶然ハルコと知り合ったいずみの相談は「不倫相手に300万貸しているが、相手は結婚する気はない」というもの。ハルコの答えは、
「その男のことはどうでもいいけど三百万は惜しいね」。帰国したらまず「男のところに請求書送りなさい」。
「いずみの気持ち」にぜんぜん忖度しない態度が道を開いたのだった。
定年後の夫が「ずっと家にいる」という同級生の悩みに対しては「男のプライド」をわかってやりなさいというアドバイス。
これ、すごく良くわかる。男はプライドの化け物だから。女のマウンティングなんか可愛いものである。
「あんたさ、人はだれだって人生のオトシマエをつけなきゃいけない時がくるのよ。私みたいに一人で生きてきた者には孤独ってやつ、あんたみたいな専業主婦には定年のダンナを負わなきゃいけない時がくるの。どっちもほおり出せないもんだとしたら、知恵とお金を遣わなきゃね。」というハルコのことば、胸にしみる。
そんなこんなで全編おもしろく楽しく読めるだけでなく、人生の真実がくっと胸に迫ってくる本である。