子ども時代からのことが書かれているが、漫画家になるまでの「青春記」と言っていいだろう。
これを読むと、さくらももこさんが単なるおもしろおかしい人ではなく、芯が強く自分をしっかり持っている人だということがわかる。そしてなんだかんだ言っても愛情いっぱいに育てられ、周りの人材にも恵まれていたのだ。飾らず正直でまっとうな考えと行動は欠落ではなく豊かさから出来ている。
「ちびまる子ちゃん」という作品がどのようにして生まれたのか、なぜあんなに共感を呼ぶ漫画になったのか、分かった気がする。いろんな意味で、すぐれた作品は裾野が広いのだ。まさに富士山である。
漫画家になるという夢をなぜか知っていた高校の担任教師、「現代の清少納言」とまで褒めたたえ彼女の才能を見抜いた先生もすばらしいと思う。彼女は「持っている」のだ。
お母さんから見れば「何もせず、寝てばかり」いた高校時代の後半、彼女は自分の夢を追うことに専念していた。
入試の論文のために書いた文章を絶賛された午後、水を浴びた「風呂場の窓が、昼の光で輝いていた。」「私は、漫画家になりたい。小さいころからそう思っていたのだ。絵も好きだし、文章も好きだ。それ以外の事は全部苦手だ。そんな事、最初っからわかっていたのに、私は何を迷っていたんだろう。」
ここまで読むと、さくらももこが成功したこと、でももう亡くなっていることを知っているのに、がんばって!とエールを送りたくなる。そういう温かい明るい本なのだ。
たぶん、世の中に何人かはこのような瞬間を持つことのできる人がいる。「それ」を見つけて手放さなければ、人生はおおむね成功なのだと思う。どこまで行けるかはともかくとして、道はけっこう開かれているのかもしれない。それぞれの持って生まれたもの、手にしているパイは違うけれど、いくつになっても始められるしそれなりにがんばりそれなりに楽しめると思う。
ももこ、がんばれ!!!