トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

秋の小さな旅

今日は半日の小旅行に出かけた。

大好きな鎌倉。半日なので、あちこちぶらぶらとはいかない。2年ぶりくらいの鎌倉だが、由比ガ浜の海を見て蕎麦、と的を絞った。ここまで来たらせめて長谷寺へは行きたいところだが、今回は我慢。

海は美しかった。房総の海、伊豆の海も好きだが、鎌倉の海はまた格別だ。水平線までキラキラと光があふれて、心はサーフボードに乗って沖へと向かう。スタバで詰めてもらったラテを飲みながら、ひとりの時間を満喫した。海と空と自分がしっくりとなじむ。それが鎌倉の海だ。

蕎麦はまずかった。コロナの前はひと月に一度くらい通っていた店なのに、違う店だったかと騙された気分にすらなった。天ぷらがべとついている。箸でつまむと、じゅわーッと脂っぽい衣がまとわる。蕎麦は実はもともとそれほど秀逸な店ではなかった。今までは雰囲気と接客が良くてひとりでもゆっくりできる店だったのに、その接客もひどかった。蕎麦屋は昼間っからまったりと酒が飲める場所だと杉浦日名子さんが書いておられたが、酒はともかくそういう懐の深さのようなものが蕎麦屋の魅力なのに、それが消失している。

コロナの前と後で変わってしまったのだろうか。心を合わせてがんばっている店や旅館もあるのに、この店は劣化している。ワタクシはもうこの店を訪れることはないだろう。白い大ぶりな暖簾と建物のたたずまいが以前のとおりなだけに哀しい。

帰る道々、新しい店を開拓しなくては! と思い、それも楽しみだと思った。北鎌倉あたりがいいかもしれない。気持ちの良い人たちが働いている気持ちの良い店がどこかにあるはず。

海を見ているときにふっと池田晶子さんの文章を思い出した。「自信と言うのは未来に対して持つものだ。現在の自分について感じることは事実であって自信ではない。まだ来ない未来の自分について確信することを自信と言うのだ。」というような内容だった。少し違うかもしれないが、心に残っている。唐突だが「自信を持とう」と決めた。何も持ってないワタクシが前へ進む原資はそれしかない。残りの人生、きっと充実して楽しいものにできる。

帰りの電車の中から都立美術館のポスターが見えた。来週はゴッホだ!