トマト丸 北へ!

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『ヘンリー・ジェイムズ短編集』

ヘンリー・ジェイムズ短編集』 大津栄一郎編訳  岩波文庫

「私的生活」 「私」は才能のない二流の人間。スイスのリゾートホテルで有名人たちと同宿となり、社交生活を楽しんでいる。メリフォント卿夫妻、文壇の大立者クレア・ヴォードレー、美人女優のブランチ・アドニーとその夫。ブランチ・アドニーはヴォードレーに戯曲を書いてほしいと依頼しているが、魅かれているのはメリフォント卿だ。

「もうひとり」 二人の老若のオールドミスが、遺産で贈られた古い屋敷に同居することになる。そこに現れたのがひとりの男、と言っても亡霊だ。この亡霊の男をめぐって三角関係が始まる。この亡霊は実在せず、幻覚なのかもしれなかった。

「にぎやかな街角」 ブライドンとアリスが結ばれた理由がよくわからない。

「荒涼のベンチ」 婚約不履行を責めて賠償金を取った女は街を離れた。長い年月が過ぎ、男は貧乏になり、孤独な生活を送っている。そこへ女が再び姿を現した。復讐のため? 見返そうとして? そうではなく、女は男に救いの手を差し伸べる。女は賠償金を増やして大金持ちになっていたのだ。自分はこうやってあなたを助けるためにあの賠償金を受け取ったのだと女は言う。男は女を恐れ、そのいきさつを気味悪く思いながらも彼女を受け入れていく。一人で坐っていた「荒涼のベンチ」に最後には彼女が並んで座っている。

 感想は、ちょっとよくわからなかった。ワタクシには教養がないということなのかもしれないという気がする。ヘンリー・ジェイムズって、有名だけれど、こんな小説を書いていたのか。「ディジー・ミラー」を昔読んだ気もするのだけれど、再読するかどうか、微妙なところだ。

 ひとつわかったのは、欧米では日本人が思っている「短編」はショート・ショートとみなされており、欧米での短編は日本では長編になるということだ。解説が勉強になった。