「ワーニャ伯父さん」
大学教授の義理の兄(妹の夫)のために領地を管理してせっせと仕送りしてきたワーニャ伯父さん。教授の娘(つまりワーニャ伯父さんの姪)と共に教授に尽くす半生だった。
ワーニャ伯父さんの妹は亡くなり、教授は再婚した若いエレーナと共に帰郷する。
家族は教授の先妻(つまりワーニャ伯父さんの妹)のものである家に住む。もともと先妻の母親、ワーニャ伯父さん、ソーニャの三人が住んでいたところへ教授夫妻が転がり込んだ格好だ。ワーニャ伯父さんがこの家を妹に相続させたのは、教授の才能に惚れこんでいたからだった。今も教授を崇拝するワーニャ伯父さんたちは新しい妻と共に教授を受け入れたのだ。
教授夫妻の自堕落な暮らしぶりにかき回されてワーニャ伯父さんたちの生活サイクルも平常ではなくなる。遅くまで寝ていて、夜更かし。そして仕事もおろそかになる。
ワーニャ伯父さんとソーニャは彼らと暮らすうちに教授が思っていたような才能あふれる人物ではなく、性格も悪く、尽くしてきた彼らに感謝のかけらもないことが分かってくる。エレーナも美人だが、私の見るところ俗物だ。
あまつさえ教授は屋敷を売り払ってその金で生活することをもくろむ。ワーニャ伯父さんや娘のソーニャの暮らしのことなどまったく考えないのだ。
それでどうなるかと言うと、けっきょく教授夫妻が(田舎の生活が嫌になったのとエレーナが浮気しそうになったので)家を出て行くことになるのだが、ワーニャ伯父さんは「仕送りはこれまでどおりします」とか約束するのだ。
「WHY?!!!」と叫びたい。ワーニャ伯父さんの母がワーニャ伯父さんに「教授の言うとおりにしなさい」とか言うのも理解できない。
「三人姉妹」も、不幸な物語だ。モスクワに行くことにあこがれながらも結局身動きとれず、絶望する姉妹。
人生の袋小路で苦悩する彼らは「後の世」に望みをたくす。「もう少したてば、わたしたちが生きて来た意味も、苦しんで来た意味も、きっとわかるはず!」
ごめんなさい。チェーホフ、わかりません。
私から見れば、あつかましい人たちがのうのうと生きて、まじめな人たちは絶望しながらもがんばって生きていくという……これが、現実なのか。そして女は美人でなければ誰からも振り向かれないという……これが現実でしょうか。
現代の日本に住んでてよかった!