トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

牧師ミツコ『74歳、ないのはお金だけ あとは全部そろってる』(すばる舎)が心なごむ

 宗教に対してどうも懐疑的になってしまう私だが、この本を読んで心和んだ。この人の生き方がすてきで、信仰というハードルを乗り越えることができるならプロテスタントの教会へ通いたいくらいだ。

P167 街をひとりで歩くのが楽しみ

 「こんなとき、私はひとりで行きます。誰にも気を使わずに好きなだけ本を眺め、好きな道を歩きます。」

 これと、お昼寝が好きというところが私と同じで親近感を感じる。

p161 71歳からプール通い

 「かなづちを克服しようと公営のプールに通いました。」

 とても共感した。70歳くらいから新しいことを始めるというの、ほんとにいいと思う。頑固に固まったりしないしなやかな精神を感じる。私も、もう2~3年したら、何か新しいことを始めたいと思う。

p156 「いろいろな人と関りを持ったほうがいい」

 教会を中心とした彼女の人間関係はとても豊かだ。週2回は説教もし、教会での集まりに参加して、心配事を持ち込む人の話を聴いたりもしている。

 質素に暮らしてはいてもけっしてケチではなく、娘たちとの週一回の会食に食事を作って持参したり、教会へ来れなくなった高齢者を見舞ったりしている。「人のために少額でもお金を使う」とし、お世話になった人にお返しも忘れない。食事をふるまったりもする。その反面、孫たちにはお小遣いをあげないという姿勢。とても潔い。

 筆者は現在公営のアパートに一人暮らしだが、自立しつつも他者との関りを大切にしているのだ。これは私のはるかおよばないところで、素直に反省したいと思う。うらやましくもある。

 思ったのは、私と違って寄りかかろうとしないから豊かなのではないかということだ。娘たちとももたれ合わない関係だ。助け合いなどを、もう少し広い範囲で考えておられるのだと思う。

 私は、甘えられないからいっそ一人でいよう、煩わしいから離れようと、この人に比べるとけち臭い。ボランティアなどについても考えさせられた。

 残りの人生、70代からは「人とかかわる」ことも試みてみたいと思った。

 「苦しかったこと」として40代のころの夫婦の不和のことが書かれている。また、「常に相手に対して一歩引く」けれども「我慢はしません」とし、「相手との関係は常に対等でありたい」とも書かれていて、すごく正直な人だと思った。「私の中にも、人よりも上に行きたい という気持ちが根本的にあるのです」と述べたり、すばらしい夫でした、などと無理に理想化しないところが逆に魅力的なのだ。この人はほんものだと思う。

p158の「できるだけ集中した結果、よいことがあったというエピソード」は、ほんとうにすてきだ。心が純粋できれいなのだと思った。

 こういう人が生きているといことを知るだけで心がなごむ。