子どものころ「一度だけ夜逃げ」をしたことのあるテトラは、アナーキーなママとその愛人との不安定な生活から早々に独立してキルト作家として生計を立てるようになる。
夜逃げのときママはテトラに「し残したことはない?」と訊いてくれた。小学生のテトラは親友の珠彦くんに手紙を書いた。珠彦くんは離れて住むテトラを度々訪ねてくれるようになる。
珠彦くんはアグレッシブな世界中を飛び回っている親を持っているが独特の穏やかな性格の男の子だ。中学生になって、テトラとの仲は親友から恋人へと変化していったが、運命は二人の可愛い恋を続けさせなかった。
その後日本とハワイに離れ離れになった二人が、テトラの書いた手紙がもたらす不思議な縁に引かれて再会する物語。
この本を読んでの私の感想はただ一つ。「ハワイに行きたい」。
コナの町やサウスポイント、村上春樹の小説に描かれ映画にもなったハナレイベイに行きたい。
ばななさんが描く場所にはどうしても行きたくなるし、食べ物はよだれが出てくる。作家って、やっぱりすごいな。殊にばななさんの文章は私のツボを的確に押してくる。
しかし今の私は中学生だったころのテトラや珠彦くんと同じだ。自分の住むところを自分で選べない。
好きな所に好きな時に行けるように、他人の都合に振り回されなくて済むようになりたい、と強く思う。そのうち流れで自然に力が湧いて来て出かけられるといいな。ハワイの力をもらいたい。