監督 リチャード・ギア
ゴネリル エマ・トンプソン
リーガン エミリー・ワトソン
コーデリア フローレンス・ピュー
ケント伯爵 ジム・カーター
少年少女版で読んだきりだったが、こうして映画になったのを観ると、シェークスピアやっぱりすごい! となる。
セリフがすごく長い。映画につづめてすらこうなのだから、劇を通しで見たら気が遠くなるだろう。ワインとか飲みながら、まったりして観るんじゃ。現代劇でなく歌舞伎に近い印象だ。
感想。
①アンソニー・ホプキンスはさすがの迫力だ。誇りと野性的な剛毅、老いることの無残、自己過信、無力な怒り。理屈ではなく胸を打つものだ。しかしこんなおじいさんに100人ものならず者を従えてひと月も滞在されたらたまらない。ゴネリル、リーガン姉妹は強欲で残酷だけれど、出て行ってもらいたいという気持ちはわかる。
②人生は悲劇、だが救いもある。
すべてを娘たちに与えて悠々自適の生活を送るつもりだったリア王は自分が力を失ったことに気づかずまだ権力がふるえると錯覚している。惨めだ。空しい怒り。
以前住んでいた近所にも、家もお金も全部同居の息子夫婦に譲ったところひどい扱いを受けるようになったおじいさんがいた。近所の人が魚を差し入れたら、ウロコも内臓も取らずに煮て供したとか。
しかしリア王には、心から彼を思い諫言が怒りにふれて追放されても変装して側についていてくれるケント伯爵、命を懸けて逃がしてくれたグロスター伯、武器を取り父を助けにきたコーデリアがいた。3人も命がけで助けてくれる人がいれば幸せだと思う。
③若者が未来の希望
グロスター伯の嫡子エドガーは庶子のエドマンドの策謀で命をねらわれる窮地に陥り、一時は狂気錯乱していた。しかしリア王の悲しみと絶望を目の当たりにして、自分の悩みなどたいしたことないと考え直す。高潔だが苦労知らずで骨細の青年が、どん底を味わって強く生まれ変わる。ゴネリル夫婦に目をえぐられて放浪する父を助け、最後には庶子エドマンドを決闘で倒した。
リア王も王の娘三姉妹もみな死んでしまい、残ったエドガーは自分が新しい未来を拓くと宣言する。どんな悲劇が起こっても、物語は続いていくのだ。