トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

角川「俳句」2024年1月号からピックアップ

1.日本の鳥たち73 大猿子(オオマシコ)

 いつも楽しみに見ているページ。今月のオオマシコは殊に美しい。撮影・解説が

 野鳥写真家の大橋弘一さん。文章もやさしくていねい。人柄がしのばれる。

 

2.田島ハルの妄想俳画 第42回

  飄々と見せたき人の冬帽子 橋本直

  画は、凶眼のカバさんが帽子屋にいる。帽子を買って被り、外へ出る、場面。

  飄々と見せたい。でもこの言葉、女にはあまり使わないよね。女にはどう転んでも

  まじめなイメージがある。不良になっても不倫をしてもふまじめにはなれない気が

  する。女だと「天然」って感じ? それもちょっと違う。

 

3.俳句の中の虫 第43回 殿様バッタ   奥本大三郎

  筆者はフランス文学者で「虫の詩人の館」館長、とある。「虫の詩人の館」って?

  どんなところ? 知りたい知りたい。でも、調べたりせずいろいろ想像してみるの

  も楽しいし。

  孤独相のと群生相のと、別種のバッタと思われていたが同じトノサマバッタ

  姿や習性が環境の変化によって変わったものだというくだりなど、めっちゃわく

  わくする。

  内容が興味深いだけでなく表現の端々まで楽しい文章。

 

4.俳句抜粋

  卵割る音の頼もし寒四郎        浅井民子

  船旅を予約してあり春を待つ      星野椿

  万の春瞬きもせず土偶         マブソン青眼

  花巡るいつぽんの杖ある限り      黒田杏子

  雛の間のありしやさしき兄ありし     〃

  初日よろしく空気囲いに浮く地球    池田澄子

  髪もつと真っ白になれ初鏡       正木ゆう子

 

 5.「新しさとは」と題して新年詠7句の作者たちが書かれているのが面白かった。

 

  ほんとうは新しくなければ俳句ではない。     矢島清男

 

  まいにち朝空を見上げて、まいにち驚く。昨日とはちがう空に、新しい雲が刻々

  と変容して、太陽は初めてこの世を照らすかのように昇ってくる。すべてが全部、

  刻々と新しい。確固としたものなどひとつもないから新しい。世界が新しければ

  私たちはただ詠むだけでいいのでは。       正木ゆう子

 

1月号も愉しく読んだ。