トマト丸 北へ!

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『ミレニアム6 死すべき女』上・下 ダヴィド・ラーゲルクランツ ハヤカワ書房

ミレニアム完結編。(でも、ラーゲルクランツのミレニアムはお終いと言っているが、別の作家でまた続編があるという可能性はある)

面白い・面白い・面白い!

複雑で込み入ってて、登場人物が多いけれど、シリーズ物だから基本、頭に入ってるので大丈夫。

リスベットとカミラの姉妹宿命の対決に謎のホームレスの殺人事件が絡んで、独特のミレニアム世界が展開されていく。

スウェーデンに行ったことはないし、この国についての知識もあまりないので、私にとってのスウェーデンは「ミレニアム」なんである。独特の地名、名前に惹かれる。いつかきっと、ストックホルムを訪れたい。ルンダ通りを歩きたいと思う。

十分楽しく読んだわけだが、実は少し不満がある。

つまり、スティーグ・ラーソンの「ミレニアム」から少しずつずれてきているということだ。面白いけど、「私のミレニアム」じゃない、という。

悪者たちがあまりに悪者らしくて、ちょっと引く。カミラとガリノフがザラチェンコを崇拝する気持ちに共感できない。そしてエリカ・ベルジュが活躍しない。その代わりにカトリンというジャーナリストが現れてミカエルの彼女みたいになってる。

その反面、ニマ・リタという山の民の造型、遺伝子の謎は魅力的だ。エベレスト登山の描写もリアルに感じる。「虹の谷」に永遠に凍り付く人々。お金で買う「登頂」、シェルパの生き方。筋を追うのではない、印象に残る文章だ。

カミラの人物像、リスベットの家庭の真実、最後までカミラに銃弾を撃ち込めないリスベットにも胸がきゅんとする。でもどうだろう。「私のリスベット」なら、自分自身を撃つかのような無残な気持ちを秘めながらも冷然と引き金を引くような気もするのだ。

後、単身アジトに乗り込むリスベットが何の作戦も立ててないのだ。超人的な活躍だけれど、ちょっと無理みたいな気がする。オートバイクラブの男達がとろい。

などなど、文句が多いのもミレニアムの世界に入り込んでいるせいだと言うことは分かっている。