トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

『悪役令嬢の中の人』コミック、小説を両方読んだが、どちらもめっちゃおもしろかったよ!

 

日本の平凡な女子大生だったエミは死後大好きだったゲームの世界へ転生する。

エミが乗り移ったのは、彼女の推しキャラだった「悪役令嬢レミリア」だ。

吊り目好きのエミはレミリアのビジュアルが気に入ったことからファンになり、「悪役として暴れまわりついには処刑される」という運命に同情していた。「ただの愛に飢えた女の子」だと知っていたのだ。

エミが転生したのは幼い少女だったころのレミリアだ。

エミは、レミリアの悲惨な運命を自分が変えようと決意し、ゲームの知識を駆使して奮闘努力する。ゲームの中で起こる悲劇を回避し、人々の心を救済し、世界とレミリアの運命を救おうとしたのだ。

うまく行き始めた矢先に、このゲームの本来の主人公である「星の乙女」ピナが転校生としてやってきた。ピナもまた転生者だったが、エミの努力により人気者で憧れの的となったレミリアを追い落として自分の主人公としての立場を守ろうと画策する。魔法の媚薬を使ったり偽証させたり、悪辣な手段でエミのレミリアを陥れたのだ。とうとうエミのレミリアは、「伝説の浄化の乙女ピナを妬み傷つけようとした」という濡れ衣を着せられ断罪されてしまった。婚約者の第二王子ウィリアルドもピナの虜となってエミを非難し、婚約も破棄された。

ピナの味方になって偽証した人々の中にはエミのレミリアと親しくしたり彼女のやさしさのお陰で自信を取り戻したりした人間たちもいた。その上婚約者まで自分を信じてくれなかったのだ。エミは絶望し、魂は凍り付いた。考えることも感じることもできなくなってしまった。

エミのレミリアの中で生き続けていた本物のレミリアの魂は、エミとすべての体験を共有し、愛することも愛されることも知らなかった幼い自分に同情し愛を注いでくれたエミを深く愛するようになっていた。

エミの魂が凍り付いて隠れてしまったことにより覚醒し身体に戻った真のレミリアは、エミのレミリアを断罪する者たちに毅然として立ち向かう。そしてエミのレミリアの無実を証明し、ピナを始めとする裏切者たちに復讐すると誓った。

ここから物語が始まる。

おもしろい!

気高く美しく強いレミリア、ひたすらやさしく愛情深いエミ、どちらもとてもチャーミングに描かれている。冷徹なレミリアが真の復讐のために愛情深いエミとしてふるまうところもおもしろい。漫画と原作を両方読んで堪能した。

レミリアの活躍と復讐に胸がすく。

たいていの物語では最初は悪人として描かれてもだんだんといい所が見えて来て最後は全員仲良くなったりしがちだが、レミリアはそんなてぬるいことはしない。レミリアは悪い奴にはきっちりとお返しする。

自分たちの卑怯さ卑劣さについてまったく反省せず、むしろピナにだまされて不運だったと言い訳ばかりするのだから、救いようが無い。ピナももちろん何の反省もない。

それにしてもピナの末路はきびしい。ちょっとやり過ぎ?

でも以前から思っていた。よく復讐のために悪い奴を殺したりするけれど、ただ殺すだけで復讐になる? 殺されるのは一瞬だし、後悔したり苦しんだりもあまりしない。ほんとうの復讐はそんなもんじゃないと。(こんなことを書くと人格を疑われるかもしれない。あくまでもフィクションの世界の話です。)

でもあまりに酷い。ピナには早く心から悔いて生き直してもらいたい。