トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

『わが家は祇園の拝み屋さん』2(望月麻衣著)

小春は中学三年生。受験を控えナーバスになっている級友たちにいつの間にか妬まれていた。そんなとき小春の他人の思いを読み取るという能力が覚醒する。信じていた友達の本心に気づいて傷つき、引きこもりになってしまった小春は、京都に住む祖母と叔父の営む「さくら庵」に寄宿することになる。そこで遠縁の賀茂澪人と出会った小春は眉目秀麗で謎めいた澪人にときめくのだった。ここまでが1の内容。

2では小春と澪人との関係に新展開が。

小春はいったん東京へ帰り、改めて両親の許可を得て京都で進学することに。小春の父と祖母との確執についても明らかになる。

他人の考えていることが分かってしまうという小春の霊感をコントロールすべく澪人は小春にレッスンをする。ドキドキの小春だが、澪人は妹のような存在としか思っていないようだ。そこには澪人の秘密の苦しみがあった。

だが自分を捨てて賀茂家と世の中のために尽くそうとして苦しんできた澪人の人生に転機が訪れる。それは小春との関係性にも変化をもたらすのかもしれないものだった。

また、小春も進路を考える過程において「何をして生きていくのか」目標を定める。

 

和菓子 金魚羊羹、レモン寒天、和風マカロン、和風スイートポテト、栗茶巾、

    抹茶チョコレート、チョコ黒豆、星の砂糖菓子

お祓い 塔の幽霊、堀川通の妖

お言葉 若宮「人が生きていくのに大切なことは、世のため人のため、何より自分のた

     めに生きることです」「あなたは大人になることを諦め、いつ死んでも良い

     と自分の心と体をすべてないがしろにし粗末に扱いすぎました」

    若宮「神は常に人を介したり、近くにいる動物を介したり、本やテレビや雑誌

     を介したりと、何かを介してメッセージを伝え、人を助けようとしていま

     す」

    若宮「一人ひとりが三位一体を大事にしていただければ必ず良い方向へ進んで

     いきますから。たった一人で何ができるだろうと思うかもしれませんが、

     人は一人ひとり宇宙を持っていて、つながっています。決して小さな存在

     ではありませんよ」

 

この最後の若宮のことばに心を打たれた。

世の中を良くするために必要なのは、天下国家を論じたりボランティアに励むより、自分が明るい気持でいて他の人たち、世の中、そして何より自分自身を大切に生きることが基本になるのではないだろうか。

ひとりの人間が明るく他人に親切に生きるということは、けっして小さなことではないのだ。

ちなみに「若宮」は1で小春が助けた龍の子ども。実は恐ろしい力を持つ黒龍だ。この龍神と澪人、小春は前世にまたがる深い縁で結ばれていることが次第に分かってくる。

 

 

 

 

空が明るい。まだ風はつめたいけれど。

今週のお題「小さい春みつけた」

今の写真ではないが、埼玉は航空公園の蠟梅。12月からが花期と言うが私にとっては早春の花だ。

風はつめたいが、空がどことなく明るい季節。厚いコートに身を包んでサクサク歩く楽しさ。

もうすぐ春だよってときがいちばん春っぽい気がする。



魔法が使えるなら、18歳の美人になりたい

お題「もし、1つだけ魔法が使えるなら、どんな魔法が使いたいですか?(どんな作品でもOK。オリジナル魔法でもOK。ぜひ、お気軽にご参加ください)」

一回こっきりなのか、それとも一つの魔法の力を手に入れていつでも使えるのかで、違ってくる。

一回こっきりでその効果が死ぬまで続くのなら慎重にならなければ。例えば「18歳くらいの美人になりたい」が叶っちゃうと、今の私はいなくなる。18歳美少女の私は家族や世間に元は私だったと信じてもらえるのかどうか。どうやって生活していくのか、いろいろと困難が予想される。

ではそれを何回でも使えるとしたら? そりゃあ楽しいよね。基本は今の自分で、一日一時間くらい変身できる。18歳の美少女だよ! 遊びまわりたい。サーフィンやりたいんだよね。スノーボードも。めっちゃもてたい。いや、街を歩くだけでも楽しいよね。オシャレだっていろいろ冒険できる。9号サイズの服が着れる。メイクだって、髪型だって。

でもって都合が悪くなったらすぐに今の自分に戻る。

 

わたしの「積木崩し」対策=あたしをなめているSさんへ

Sさんはわたしをなめている。

①明るく優しく接していると、だんだんとわがままになり、マウントを取ってくる。

②わざと嫌なことを仕掛けて来て、不機嫌にさせる。

③距離をとっているとなんとかひっかかりを作ろうとするのか、「相談」ごとを持ちかける。こちらがいろいろ解決方法を考えて提案するも、「それはちょっと無理」「今はできない」などとすべて採用しない。あげくに「話を聞いてもらいたかっただけなのに」と言う。

わたしのささやかな日常に侵入してきて、楽しく過ごしている時間を変な物へ変え、無力感を味あわせようとするのだ。近しい人なのでなんとか快く付き合いたいとの努力の積み重ねを賽の河原の鬼のごとく一瞬で突き崩す。人が一生懸命積んだ積み木を前足のひとかきでめちゃくちゃにしてしまう質の悪い猫のような奴なのだ。

 

考察 ⑴Sさんにはそうせざるを得ない事情がある。定かではないがあるのだと思う。

   ⑵彼女には辛いことがいくつもあるので、心の中に悪意が溜まっている。その悪

  意に突き動かされて、ほとんど無意識にやっているのだと思う。だから人が気を悪

  くしたり怒ったりしても全然反省しないし、後悔もない。逆に自分を被害者だと思

  い、殊勝気にこっちを「許し」たりするのだ。

   ⑶「積木崩し」でカタルシスを感じてしばらくは落ち着いていても、マグマが溜

  まってくるとまた人を突いてくる。

   ⑷外部から見ると、めそめそと大人しいSさんよりわたしのほうが悪者に見えて

  しまう。

 

対策 ⑴すぐ逃げる。避けて、離れる。ちょっと話をずらす。

   ⑵Sさんと自分自身の学びを信じて遠くから見守る。

   ⑶(辛さを訴えられたら)「分かる気がします」と一応受け、「でもあなたは大

  丈夫」と大丈夫なものとして扱う。実際大丈夫なのだ。

   ⑷自分は自分で楽しく遊ぶ。遊びが足りないから他人のことが気になってしまう

  のかもしれない。



 

とにかく毎日一行でも書く。

今週のお題「習慣にしたいこと・していること」

とにかく毎日一行でも書こうと思っておおむね毎日実行している。

0.7mmのシャープペンシル必携。それとノートをどこへでも持って行く。忘れるとパニックになってしまうほど私にとっては大切なもの。俳句も散文も詩も日記もいっしょくた。見開きの右ページへどんどん書いちゃう。

俳句、上達しない。NHKで一時は佳作に選ばれ続けていたが、最近ではとんとご無沙汰だ。去年放送句に選ばれたときがピークで、その後は鳴かず飛ばず。事情があって句会もやめた。夏井先生のサイトも最高で天地人の「人」。

でも、楽しい。格上の人からしたらアホかと思われるかもしれないが、佳作や入選をしたら赤飯を炊く。この年になって自分のことでお祝いできることなどなかなかない。

続ける。一時期「たくさん送ればどれか選ばれる」と信じて最低でも五、六句投句していたが、数撃てば当たるというものでもないと悟らされた。

でも、続ける。

続けるコツは、これはだめなんじゃないかと自分で批判してボツにしてしまわないことだ。作っている途中でこれをやるとぜんぜん出来なくなる。あかんかも、こんなんけなされるに決まってると思ってもとにかく一度形にする。何十句も作り溜めて、それをいじっていく。途中の段階でポシャってしまうと、だめなんだ。心の中にいる野次軍団を追い払うこと。捨てるのは最後の段階でいい。その時は非情になってバンバン切る。残るのは一句か二句だ。これが楽しいんだよね。

散文も、とにかく書こうと思う。なかなか一つの作品にまとまらないけれど、書くことはやめない。ブログだって「こんなん自分でも読まんかも」と思わずに書く。他のブログを見ると「こういうのが書ければなあ」とへこむ時が多いけれど、すぐ立ち直る。私は私。句会と違ってわざわざ批判してくる人はいないから、その点は気楽だ。

それでどうなるの? って、どうにもならない。

でも私には必要なんだよね。

何才だろうと好きなことをやって何が悪い。そういう気分にやっとなれた。

実は来世もさ来世もあると思っている。何十世も続ければそのうち文豪に!?

 

 

 

『わが家は祇園の拝み屋さん』(望月麻衣)を読む 1

 

ごく平凡に育った中学生小春に突然異変が訪れた。他人の気持ちが読めるようになってしまったのだ。友達だと思っていた子たちの本音を知ってしまい、SNSで誹謗中傷までされて、小春は学校へ行けなくなった。

順調に育っていると思っていた一人娘の苦しみを両親は理解できず、どうすることもできないでいた。心配する両親に自分の秘密を打ち明けることもできず、小春の心は追い詰められていく。

そのとき京都の父方の祖母の電話で、しばらくこちらで一緒に暮らしたらと言われる。小春の祖母櫻井吉乃は祇園和雑貨店「さくら庵」を営んでおり、和菓子職人の叔父宗次郎が同居している。さくら庵で売られている宗次郎の和菓子は大人気で、和雑貨の売れ行きをもしのぐほどだ。

「身内以外、誰も自分のことを知らないところでなら、生きて行けるかもしれない」と小春は思う。

しっかり者の吉乃、飄々とした雰囲気の宗次郎は傷ついた小春を温かく迎えてくれた。

小春がさくら庵に到着したとき訪れていた美貌の青年、賀茂澪人は祖母の弟の孫、つまり小春のはとこに当たる親戚筋だったが、それは小春にとって運命的な出会いだった。

祖母は不思議な力を持っており、やがて宗次郎も澪人もただものではないことがわかってくる。祖母の一族は特別な一族であり、祖母は和雑貨店の女主人でありながら「拝み屋さん」の仕事もしているのだ。

ある日小春は辰巳稲荷で迷子らしき小さな蛇を見つける。これこそ小春の前世にまつわる大きな秘密へとつながる事件だった。

この物語は不思議な力を持つ少女小春の成長の物語であると共に京都の神社案内、和菓子の魅力満載の物語である。

 

1巻の神社 八坂神社、辰巳稲荷、安井金毘羅宮神泉苑晴明神社

 

和菓子 桜餅、和風マカロン、ミニあゆ、水無月

 

お祓い 安井金毘羅宮で怨念に取りつかれた女性、亡き妻の亡霊を見る男

    消えた兎(澪人の姉杏奈の相談・てぬぐいの模様のうさぎが消えた話)

    不審な雨

 

おことば 「多くの場合、怨霊は人の心が作り出すんだよ」

     「うさぎを消したのは、あんたの気持ちやで」

     「過ぎた献身や自己犠牲が美しいなんて俺は微塵も思わない。自分が幸せで

     相手も幸せが一番だろ? 誰かの幸せのためににどうして誰かが犠牲になっ

     て、それが『美徳』になるんだ?」

     「自分を安売りするのと謙遜はベツモノだ。履き違えるなよ」

     「今度は自分を殺さず、自分らしくがんばろうぜ」

 

小春と若宮 小春、小蛇(黒猫)姿の若宮を辰巳稲荷から神泉苑へ運ぶ

 

「おことば」は、この物語の中で私の心に残ったことば。たぶん登場人物の口を借りて神が述べていることだと思うので、「おことば」としてまとめてみた。

 

角川「俳句」2024年1月号からピックアップ

1.日本の鳥たち73 大猿子(オオマシコ)

 いつも楽しみに見ているページ。今月のオオマシコは殊に美しい。撮影・解説が

 野鳥写真家の大橋弘一さん。文章もやさしくていねい。人柄がしのばれる。

 

2.田島ハルの妄想俳画 第42回

  飄々と見せたき人の冬帽子 橋本直

  画は、凶眼のカバさんが帽子屋にいる。帽子を買って被り、外へ出る、場面。

  飄々と見せたい。でもこの言葉、女にはあまり使わないよね。女にはどう転んでも

  まじめなイメージがある。不良になっても不倫をしてもふまじめにはなれない気が

  する。女だと「天然」って感じ? それもちょっと違う。

 

3.俳句の中の虫 第43回 殿様バッタ   奥本大三郎

  筆者はフランス文学者で「虫の詩人の館」館長、とある。「虫の詩人の館」って?

  どんなところ? 知りたい知りたい。でも、調べたりせずいろいろ想像してみるの

  も楽しいし。

  孤独相のと群生相のと、別種のバッタと思われていたが同じトノサマバッタ

  姿や習性が環境の変化によって変わったものだというくだりなど、めっちゃわく

  わくする。

  内容が興味深いだけでなく表現の端々まで楽しい文章。

 

4.俳句抜粋

  卵割る音の頼もし寒四郎        浅井民子

  船旅を予約してあり春を待つ      星野椿

  万の春瞬きもせず土偶         マブソン青眼

  花巡るいつぽんの杖ある限り      黒田杏子

  雛の間のありしやさしき兄ありし     〃

  初日よろしく空気囲いに浮く地球    池田澄子

  髪もつと真っ白になれ初鏡       正木ゆう子

 

 5.「新しさとは」と題して新年詠7句の作者たちが書かれているのが面白かった。

 

  ほんとうは新しくなければ俳句ではない。     矢島清男

 

  まいにち朝空を見上げて、まいにち驚く。昨日とはちがう空に、新しい雲が刻々

  と変容して、太陽は初めてこの世を照らすかのように昇ってくる。すべてが全部、

  刻々と新しい。確固としたものなどひとつもないから新しい。世界が新しければ

  私たちはただ詠むだけでいいのでは。       正木ゆう子

 

1月号も愉しく読んだ。