トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山

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ひとり山ひとり温泉ひとり酒

 ほんとにかっこいい本。そして楽しい。

数年前、東海道の歩き継ぎの旅をした。その時々で人数は違ったけれど、中心になる人は一人で、その人が推進役であり、リーダーである。

どうなったかと言うと、そのリーダー役の人とけんかになり、いじめられ、最後には誘ってもらえなくなった。早く言えばハブられたのだ。

彼女も悪い人ではない。親切で、たいていの人が「彼女、いい人よ」と言うだろう。私自身にしても、そんなに悪い奴ではない(と思う)。誰も悪くない。組み合わせがまずかった、としか言えない。

あまり残念とも思わなかった。感じたのは、「私、やっぱり一人が好き」ということだ。

私の場合、基本がマイペースなのだ。どうしても自分で調べて計画を立て、好きなペースで歩きたくなってしまう。

それなのになぜ団体行動をしていたかというと、「いっしょに旅してくれる仲間がいること」を証明したかったからだ。(誰に?)

幼いころからどこにもはまらなくて、ハブられることが多かった。それが劣等感になって、他人との距離に自信が持てず、気楽にしていられなかった。そのくせ平気でけっこう無礼なことをしてしまったり。ADHDみたいなところもあった。

学生のころ、何かしているとよく、「ひとり?」と訊かれたものだ。それを自分がダメな証拠だと感じて、無理くり他人にひっつきまくったり(そして嫌われたり)していた。

この本の著者は、私のようにやむを得ずひとりなのではなく、自分で選んだひとりを楽しんでいる。そのほうが楽しいから。

あー、もっと若いころにこの本が読みたかった。

他人の周りをぐるぐる回って、振り回されまくり、結局どこの仲間にも入れず、何十年も無駄にしてしまった。

でも、今、読めて良かった。

たとえば、「老後に大切なもの」として、「人間関係」があげられることが多い。良好な隣人関係が長生きの要件だと言う。こういうの、モラハラの一種だと思って無視できる。

隣人と仲良く出来ればそのほうがいいに決まってる。そうかも知れないけれど、無理して嫌な奴とつながると生きているのが嫌になる。

ひとりが好きな人はひとりでいていいのだ。

それを堂々と書いてくれている男前な本である。