トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

『好きな人とだけ生きていく』 永松茂久 WAVE出版

心がスッと軽くなり、なおかつ実用的な本だ。

 

「イヤな人とうまくやる方法」はないし、あったとしても時間と労力がもったいない

 

「すべての人と仲良くする」なんて、神様でも仏様でも難しいことにあなたが挑戦する必要があるのか、と筆者は言う。表面を飾り、本心を隠して色々な「うまくやる」テクニックを使ったとしても、嫌っていることはどうしても相手に伝わってしまい、うまくいくはずがないのだ。

「嫌な相手のいいとこ見つけをするべき」とか、「嫌な相手の嫌な所は自分の写し出しだ」とか色々なことが言われ、結局たとえ意地悪されても原因は自分自身にあるとか言われ、「えっ、私のせいなの?」と心外に思っているのにいつの間にか罪悪感を植え付けられている。

そんな人は、この本を読むと救われる。

 

大切なのは、自分のメンタルを守ること。

4つの「さる」が大事。それは、「見ざる、言わざる、聞かざる、その場を去る」。

 

嫌な相手は徹底的に無視する。同じ場所にいるしかないときも、相手を居ないものとして扱う。そして出来るだけ早く「その場を去る」。

これを胸に置いておくだけで、明るく生きていくことができるのだ。

もちろん著者も言っているように、こういう態度を取るといっそう酷いことを言われたり、言いふらされたりする恐れがある。でもそれでも無視したほうがいいと著者は書いているし、私も体験的にそう思う。

穏やかにふるまったり、おどおどと顔色を窺ったりしていると、もっともっともっとひどい目に遭うことが多い。嫌な奴は、下手に出たからと言って許してくれたりしないのだ。

酷いことをされたり言われたりしたときに相手を「許す」と往々にして相手はつけ上がり、ああこいつには何してもいいんだとさらに嵩にかかっていびり出すのがおちなのだ。

「寛容さ」が効果を発揮するのは、自分の方が段違いに上位にいて強い場合だけだ。自分を罰する力のある人が許してくれれば有難くも思うが、弱っちい奴が許しても臆病で意気地なしだとバカにされるだけなのだ。

かと言って相討ち覚悟で必死に戦ったとしても何も成果はない。というか嫌な相手といちいち戦っても相手は変わらない。いや、変わるかもしれないが、その時間がもったいない。

 

最近まで私はこのことを理解していなかった。鈍い私は最近やっと漠然とこの世の中の仕組みに気付いてきたのだが、この本を読んで明確になった気がする。

 

で、この4つの「さる」だが、「見ざる、言わざる、聞かざる、その場を去る」に加えて、私は「思わざる」も入れたい。

というのは、私は、嫌な相手が目の前にいなくても、何度も思い出して嫌な気分になってしまうことが多いからだ。これこそ時間の無駄であり、自分のメンタルを悪化させる元だ。著者も書いていたが、そんな風に人がもんもんと苦しんでいるとき、当の「嫌な奴」は、たいがいピザでも食べて呑気に笑っていたりするのだ。

 

好きな人と一緒に居ればお互いに良い気を回すことができるが、嫌な奴が相手だと、どう取り繕っても気は回せないし、回ってこない。それなのになんとかうまくやろうと心を砕くなんて、時間の無駄だ。

でも、離れよう忘れようというベクトルの努力は、結局相手にこだわり嫌な体験をリピートし、逆に嫌な奴を心の中にしっかりと住まわせてしまうことになる。だから、必要なのは離れよう忘れよう、考えまいとこだわることではなく、ただ自分の好きなこと、好きな人に集中することだ。

 

目から鱗のいい本で、面白く読みやすい本でもある。

ノートに書き抜いた箇所は多い。それらをここに書き出すとこの本のほとんどを書き写すのと同じになってしまうので、エキスと思われる部分を取り上げて書いた。