トマト丸 北へ!

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俳句の20冊ー4冊目『型で学ぶはじめての俳句ドリル』

『「型」で学ぶはじめての俳句ドリル』 夏井いつき 岸本尚毅  祥伝社

 俳句の20冊の4冊目。

 夏井先生が「チーム裾野」とよく書いておられるが、この本で「俳句が百年後も富士山のように高くて美しい山であり続けるために必要な豊かで広い裾野」と説明されていて、おお! と思った。そうか、取るに足らない句をせっせと作る毎日だがそれは自分以外の人間にとっても意味のある営みなんだな。

 夏井先生の言葉は読む者を「豊かで広い裾野」へ連れて行って放し飼いにしてくれる。その夏井先生と岸本博士(と呼びたくなる博識と明晰な分析力)とはよいコンビだ。互いに敬意をはらいつつあくまでも率直な真摯な会話でどんどん作句の世界へ切り込んでいく。

 この本を読んで思ったのは、「とにかく歩き回ることを楽しめる人」(P42)になろうということ。歩き回り、「頭を空っぽにして見たままの俳句を」を作ろうと思う。「日が照って風が吹くかぎり発電できる」という岸本博士の言葉に力づけられた。岸本先生ご本人は「外から入ったものを加工するやり方」で長年やって来られたとのこと。それもありなんだ。

 とはいえ、すこしはひとの心に刺さる句を作りたい。

 この本からつかんだヒントは、「3音か5音分のオリジナリティかリアリティ」を目指すということ。今まではただ自分の感じたことをそのまま表現してきたので、類句が多かった。平凡だし、季語の説明になってることも多い。季語と出会うことによってそのものに初めて向かい合い、感動して作る。自分にとっては初めての出会いだが、皆さんにとっては先刻ご承知、二番煎じということになる。

 でもどこに気を付け、どこへ向かえばいいのか分からなかった。〇がついても偶然いいものが出来たかという感じ。次はまた没句になってしまう。「3音か5音分のオリジナリティがリアリティ」と明確に言ってもらってハッとした。

 近しい人で良い句を作る人を見ていると、人間としての格の大きさがやはりものを言うように思う。技術だけでは追いつかない部分が大きい。人間が出来た分だけ言葉も光ってくる気がする。

 でも工夫の余地はある。

 これからだ(と思いたい)。