トマト丸 北へ!

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感想『「また、必ず会おう」と誰もが言った』に青春を思う。

 

見栄っ張りで嘘つきな少年和也は何気についてしまった嘘をほんとにするため、東京ディズニーランドへの日帰りぼっち旅行を敢行する。

友人に自分を大人に見せようとかっこつけた嘘をつく発端や母親をごまかして旅費をせしめたりする、ちまちまとした嘘に笑える。そのバカさ加減がいかにも青春って感じ。

そう言えば私、親に嘘をついたことなかったなと思うと淋しい。

ディズニーランドで友達に見せるための「証拠」の写真を撮ったり、孤独を噛みしめたり、こんなアホな行動、惨めったらしさにも婆さんは青春を感じて羨ましいのである。

学生時代にアホできなかった分婆さんになってから飛ぼうとしても、絵にならない。少年が大人たちに手を差し伸べられるのはわかるが、婆さんが若い子にやっかいをかけるのはちょっと。やさしく元気にがんばっている人たちに迷惑はかけたくない。

いよいよ追い詰められる和也。空港へ向かうバスが渋滞に巻き込まれ、格安チケットの飛行機の出発に間に合わなかったのだ。しだいに人が少なくなる夜の空港で途方に暮れる和也。チケットは払い戻されない。所持金もわずか。知り合いもいない。親には嘘をついて出て来ているから頼れない。

ここから和也の冒険が始まる。

いいな。

もうこんな旅はできないだろうが、旅がしたくなる物語だ。

最初に助けてもらった空港の売店のおばさんの教え、「どこへ行ってもお世話になった人の役に立つことをする」という知恵には感心した。掃除、片付け、その他相手の役に立つことをやる。さっと体を動かす。

これは幸せに生きるための賢い知恵だ。ちょっとした勇気が必要だけれど。

最後の方に書かれていた「人が真剣に努力しようとしていると必ず周りに足を引っ張ろうとする奴が現れる」というのもほんとう。

人が楽しく努力していると、それを気に入らないで泥水をぶっかけてくる奴が現れる。それに対して自分が悪いと思って委縮したりする必要はない。そういう奴は嫌な奴なのだ。嫌な奴に負けてはいけない。

これは何かしようとする人間にとってお約束のあるある。二十年前に戻って自分に教えてあげたい。

何も大事業でなくても、人が何かを楽しそうにやってるとそういうITを持たない人は憎んでくる。今日だってカフェでコーヒーを前に俳句をひねっていたら、横の席のやはり一人カフェしているおばさんが憎らしそうにこちらを見ていた。淋しいのだと思うが、こんな人と話をしたりしたら、朝の時間がだいなしである。案の定店員さんに近くの高級マンションの住人であることをにおわせて引かれていた。

こういうのはお約束だからそこで逃げたらだめなのだ。

まあいろいろあったが、和也少年はこの二つの大切なことを「見栄っ張りの嘘をほんとにするためにでかけたが思いがけず無銭旅行になってしまった旅」から学んだ。

青春、いいな。