トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

印西小さな旅

そうだ、今日は小さい旅をしてみようと思い立ち、犬を助手席に乗せて家を出た。

目的地は「XXX公園」だ。

二月の節分のよどんだ空に合うのは「沼」だと思った。

家を出たのが遅かったので、国道16号線を右折したときにはもう午後2時を回っていた。

だんだんと道がさびれてくる。北総の大地は野山も畑も枯れ果てて、くすんだ色の濃淡で覆われている。侘びしい午後の日が薄く光る。

犬は大人しく横になっていた。どこへでも二つ返事でついて来て文句など言わないのだ。

ようやく到着した「XXX公園」の駐車場には、車が三、四台。人影は見えない。

近づくにつれ走る車の数が減り、終わりごろにはときたまダンプカーとすれ違うのみという状態だったので悪い予感はしていたのだが、やはりここまで閑散としていると薄気味悪い。小高い丘の木立を抜ければ沼に出るのかも知れなかったが、すでに私は散歩する気をなくしていた。

とりあえず我慢していたトイレが目の前にあったから、用を足して犬にもおしっこしてもらってと車を下りようとしたとき、視界の隅に初老の男が現れた。男はこちらをちらちらと見ながらぶらぶらと歩いてトイレに入って行った。薄く笑っているようにも見えたが気のせいだったか。

そのとき、何かぼんやりとした違和感が車のドアに掛けた手を押しとどめた。トイレの建物をじっと見る。やはり、初老の男が消えたのは女子トイレの中へであった。トイレ掃除のおっちゃんかも知れないが、そうでないとすると?

私は散歩の期待に色めき立っている犬と尿意をなだめてすぐにその駐車場を出た。

侘びしい気分で帰途につく。

途中のセブンに車を停めて犬と自分の尿意を解決し、温かいコーヒーを飲みミルクフランスを犬と分け合い、やっと気分が良くなる。

ちょっとしょぼい北総の小さな旅。もう一日が暮れようとしていた。薄い太陽はいつの間にか金色の夕日へと姿を変えている。