ベストSF 2020 国内2位 の作品。
文句なく面白い。めっちゃ面白いけれど、よく分からないというのが本音です。
頭がグルんぐるんとなる快感を味わいたい方はぜひ。
これは、ちょっと分からなかった。VR技術が、わからない。
「鏡石異端」
裏山の工事の穴に落ちた日、幼い「私」は初めて未来の「私」に会った。
未来の「私」は、その後たびたび「私」の前に現れ、未来の事故を防ぐよう忠告してくれた。未来の「私」に守られている「私」の人生。しかし「私」は、しだいにある疑問を抱くようになる。未来の「私」に出会わなかった「私」は、どうなったのだろう?
記憶と過去についてのパラドックスめいた考察の試み。
読み終えてふと思う。今の「私」は、一瞬後にはもう存在しない。10分前の私は「私」じゃない。その私は、どこへ行ったのだろう?
過去から未来へ向けて無数の「私」が存在し、ある時それらがバラバラに動き始めるのではないかと思うとめまいがする。
「邪義の壁」
これも記憶を題材にした作品だと思う。こちらは未来を観るのではなく、逆に過去へとどんどん掘っていく物語。
過去を掘り進んだ先で出会ってしまったのは、誰でもなく自分自身だった、という。
うーん、誰か解説してほしい。
「龍動幕の内」
この題名の意味がわからない。
1897年、南方熊楠と若き日の孫文。謎は裏路地の樹上に現れた「天使」。
二人はロンドンの街を闊歩し、天使の謎を解く。
このコンビ、魅力的だ。ぜひぜひシリーズ化してほしい。(解説付きで)
「検疫官」
「物語禁止令」の施行されている国が舞台だ。
大統領は物語を追放した。なぜなら、自分が大統領になれたのは物語のおかげであり、自分の地位を脅かす者も必ずや物語を利用するだろうと考えたからだ。
このあたり、『サピエンス全史』の「人類が生物の覇者となったのはフィクションを作れたから」という記述を思い出すと納得できる。
物語が国内へ侵入するのを防止することを仕事としていた検疫官ジョン・スヌレは、やがて行き詰まりを感じて退職する。彼の死の瞬間を一筋の光が照らす。それは物語の光だ。彼は微笑み、「物語というものは人間が抱えた不治の病だ」と思うのだった。
現実のアメリカ合衆国が荒廃しきった時、人々は自分の身体を冷凍保存し、ある会社が提供するバーチャル世界に意識のみとなって移住する。現実の世界には、ごく少数の変わり者や少数民族たちが残り、復興をめざして働いていた。
ある日仮想世界に現実の世界からの通信映像が届く。「ミラクルマン」こと「アメリカン・ブッダ」が仮想世界の住民たちに語りかける。彼の言葉により、仮想世界の住民たちは「輪廻の苦しみ」に気づいて苦しみ始める。今後の生き方についての意見の相違から、彼らの間に分断が生まれる。彼らはどこへ行くのか。