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養老孟司の幸福論  中公文庫

 

養老孟司の幸福論 - まち、ときどき森 (中公文庫)

養老孟司の幸福論 - まち、ときどき森 (中公文庫)

  • 作者:養老 孟司
  • 発売日: 2015/07/23
  • メディア: 文庫
 

 この本を読んで取り入れたいと思ったことは2つ。

ひとつは、「田舎に行け。そこで時を過ごせ」。

人は「人事の世界と花鳥風月の世界を行き来しながら生きてきた」「私たちには自然の世界(花鳥風月の世界)が半分そなわっていなければいけない」と著者は書いている。「花鳥風月の世界」とは、人間の意識の外に人間の意思とは無関係に広がっているもの」だ。その世界を失いつつある現代人は、自然とのつながりを取り戻す必要がある。

しかし「自然はリスクそのもの」だ。著者の大好きな虫取りも、ときには命の危険を伴う。しかしそれでも行くと著者は言っている。要はリスクを恐れていては何も出来ないということだ。確率というものも色々な側面を持つ。9割安全と言われても、そこへ踏み込む一人一人にとってはZEROが100か、2つに1つに過ぎない。要は「やってみるしかない」のだ。危険を恐れて家の中に閉じこもっていることを選択するか、それでも出て行くか、ということだ。

自然はどこから入ってもよく、すべてがつながっています」と書かれている。窓辺に置く緑を見つめることでもいいのかなと思う。山でも海でも、好きなところへ行く。人事の世界以外の世界を感じて、自分の中に取り込むこと、なんだな。

人間の身体もまた自然だ。頭で考えて、コマーシャルに扇動されて、あたかも何か手段を講ずれば老いからも死からも寝たきりからも逃れられるかのように私たちは思いこまされている。そうではないと著者は言っているのだと思う。老いも死も寝たきりも、免れがたく、そうなるかならないか、いつそうなるかは分からない。自分の身体に向き合い続けるしかない。検査や診断に頼らず「体にきく」ということ。これを忘れてはいけないのだ。

もう一つは、「本気になる」ということ。「『ああすればこうなる」という思考法は人の人生をつまらなくし、場合によっては人を不幸にしている原因のひとつ」だとある。本気でやるためにはリスクを計算していてはだめだ。「やってみるしかない」のだ。

それぞれの人が本気でやっていれば、世界はいいところになる。それを不純な動機で動くからーこのほうが楽だとか、このほうが儲かるとかーそういうことが世の中を悪くしている。これも、本当は誰でもわかっていることなのだと思います。 

 飛躍するかもしれないが、本気でやることこそがGIFTであり祝福なのだと思う。リスクがあっても、不確定要素があっても、やるのだ。でも、それじゃあだめだ、と思って人は違うことをしてしまう。そして本気でやっている人を冷笑する。隙あらば違うことへと誘いこもうとする。そんなことを考えた。

この本を読んで「田舎へ行け」「本気になる」の2つを自分の生活に取り入れたいと思った。

もうひとつ心に残ったのは、日本の自然について書かれている部分だ。緑の多様性、川の透明度、「これほど裸の地面がない国は少ない」など。もっと日本の自然に触れようと思う。コロナが収束したら、著者が美しいと言う四国の新緑を見に行こう。