トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

『棚からつぶ貝』 イモトアヤコ          文藝春秋

イモトアヤコさんの人々とのふれあい記。

まずお父さん。穏やかなお父さんが一度だけ彼女を怒鳴った場面にキュンとする。もう少しで夜の海に落ちるところだった小学4年生の彼女へ「何しちょーだ! 落ちたらどげすーて!」と怒鳴ったお父さん。これはお父さんの深い愛情のこもった怒りで、イモトさんが自分がどれだけ愛されているかを肌で感じた思い出だ。どの子も、こんな風な思い出を持っていると思う。そうでありますようにと願う。「無条件に愛された思い出」こそ人が生きて行くのに必要なものだから。

以前イッテQ登山部で壮絶な登山のさなかイモトさんが(勝手をしていいなら)「ソッコウお父さん呼ぶわ!」と言ってたのが印象に残っているが、お父さんが大好きなんだなと、この本を読んで改めて感じた。

お母さんも、セーラー服でテレビに出てネタをやったり、やっぱりイモトさんのお母さん! という感じ。妹さんと姪っ子さんたちの可愛さは言うまでもない。

いちばん好きなのは同じ事務所の後輩中村涼子さんとのキャンプの話。初心者の2人はキャンプ場の管理人さんからめちゃくちゃ怒られるのだが、それでもお互いを1ミリも責めないところがいい。後日談「このところ涼子の夢がどんどん叶いはじめている。~」の部分が特にいい。「最高に楽しそうに生きている。」お互いの幸せを喜べるっていうのが最高だと思う。

その他イモトさんが出会い、交流している素敵な人たちが31人。

世の中には私の周りはいい人ばかり!というもって回ったマウンティングもあるが、イモトさんはただ事実を書いているのだということが分かる。至極自然な愛されキャラなのだと思う。私もイモトさんが大好きだ。イモトさんのNHKの番組を見て、中国語の勉強を始めようかと思ってるくらい。

オーディションでイモトさんを見出した石崎さんも、すごい人だと思った。イモトさんの石崎評で「ADに声を荒げるのを見たことがない」というのもすてき。仲間や一緒に働く人を大切にするという点がイモトさんとの共通点なんだろうな。

 

棚からつぶ貝 (文春e-book)

棚からつぶ貝 (文春e-book)