『流浪の月』の凪良ゆうの作品。(『流浪の月』、映画も小説もめっちゃいい。ぜったい、おすすめ)
p87 闘うための武器が武器の形をしているとは限らない。(甘いおかしということもある。)
p220 道しるべを見落とさないよう、自分が自分を愛してあげなさい
闘う武器は人それぞれだと思う。他人に振りかざすものばかりでもない。この部分から作者の人に対するまなざしをじかに感じた。みんなそれぞれ一人ぼっちの戦いを日々戦っているんだ、というような。どんなに愛していても代わって戦うことをできない、そういう戦いを。
ただ出来ることは自分が自分を愛することだけだ。よそを向いていると大切なことを見過ごしてしまう。
そんなふうなメッセージが込められているように思った。
想定外の展開については触れてはいけないと思うが、要は「普通の人なんていない」ということだと思う。何の苦労もない人なんかいないし、闇を抱えていない人もいない。
常識人でまっとうで家庭もちゃんとしてて、と見えても抱えているものはあるのだろう。この世界が理不尽で不条理で闇を抱えているように、ひとにもそういう部分があって当たり前なのだ。そういう世界でそういう人たちの中で、じゃあ自分はどうするのか、だけが選べることなのだ。
妻を亡くした主人公は「すみれ荘」の管理人として働いている。体の弱い彼は幼い娘を言われるままに亡き妻の両親に預けていた。そもそも結婚に反対だった義両親は娘を父親に会わせようとしない。娘の過労死は彼のせいだと思っているのだ。
軋轢を避けて静かに生きる彼はすみれ荘の住人達と家族のように暮らしている。古いアパートだけれどその交流は暖かい。心も体も弱い彼のためのサンクチュアリのようなすみれ荘だけれど、人間の住むすべての場所と同じく、悲しみや秘密がないわけではなかった。
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