凪良ゆうの作品を読む三作目。
ハードでアグレッシブで、混沌としていて、どこかおかしみもある。読んでいて頭ががんがんするくらいのめり込んだ。
小惑星が地球に衝突して人類滅亡するまでの一か月の物語。
読んでいる途中にトイレに立ったりすると、もしかしたら家の外の道路では略奪や殺戮が起こっているんじゃないかと思っている自分がいる。
小学生のころ校舎の屋上で寝転んでいて立ち上がろうとしたとき、目の錯覚で屋上の床が垂直にそそり立っているように感じた。足の下には何もなく、垂直な壁が何十メートルも続いている。落ちる、と思ったときの怖さは忘れられない。
そういう風に日常が逆転するほど人を引き込む作品だ。
311の津波の映像のように、信じられないことが起こるのが日常だ。今の新型コロナの流行も、まさかまさかの世界である。
この『滅びの前のシャングリラ』は、そういう日常のもろさの究極の話だ。カオスと不条理がはびこる世界。
そのとき、その人が何を信じ、望んでいるかが明らかになる。生きるということが、死を突き付けられたときに初めてその姿をあらわにするのだ。
ばらばらに見えていた人々が次第に一つの場所に集まっていくとき、生きることの意味が切ない歌となって立ち上る。
ほんと、それぞれ好きなように生きるしかないんだなと、そう思った。