もとより少女時代からの愛読書だ。
アンのかんしゃく持ちなところが好きだった。「にんじん、にんじん」と耳元でささやくギルバートの頭に石板をぶつけたシーンが痛快だった。大声で言うのではなく、小さな声で言うところがより陰湿な感じで、後に好青年に成長するギルバートも幼いことろはいい気になってる悪ガキだったわけだ。そんな奴に対し、泣き寝入りすることなくやり返すアンがすてき。
空想好きで本好きなところも。大好きだった。
村岡花子訳の新潮文庫である。何度も何度も、文体が脳に沁みこむような読み方をしていた。
そのせいか他の人の訳にどうもなじめない。
何十年も前の文庫本だから古びてよれよれだし、字は小さいし、しかも印刷がかすれてきているのである。当然新しいのを買うわけだが、読んでみると違うのである。他社の『アン』はどうにも読みにくい。違和感がある。やっぱり村岡花子訳新潮文庫と思って購入しても、現代風にアレンジされているので、やっぱりどこか違うのだ。
つくづく「村岡花子」の偉大さを感じるわけだが、古い文庫本はどうにも読みづらく、困っている。でも捨てられない。この、昔の訳で読みたいのだ。