トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

『最低で最高の本屋』松浦弥太郎著を読む

 

 松浦弥太郎さんの本は、定期的に読みたくなる。けっこうきびしいことが書いてあるので避けたい本でもあるけれど時々自分の気持を引き締めたくなると買って読む。どれにするか決め手は目次。目次の中に心を惹かれるフレーズがあると迷わずに買う。

「思いついたことはすべてやる」「セカンド・バースディ」「地図は自分で歩いて作る」の3つがこの本を手に取らせた。

この本を読むまで著者が本屋さんだと知らなかった。「暮らしの手帖」の編集長だとのみ認識していたのだ。

序文に、レイモンド・マンゴー著のシアトルで小さな本屋をはじめる物語『就職しないで生きるには』に魅かれた少年時代のことが書かれている。ここを読んだだけで、ああもっと早くこの本を読みたかったと思った。

ぜんぜん就職に向いてなかったのに、どこかに歯車として組み込まれようと空しい努力をして半生を過ごしてしまった私。無駄なあがき、挫折、自信喪失の三点セットが私の人生だった。集団に属することができない自分は失格者だと思ってきた。べつの道もあるって知らなかった。同じ苦労するなら違うことをやれば良かった。

年をとってますます就職は難しく、というか不可能に近くなったけれど、「起業」すればいいのだ。本業は主婦でそのおかげで生活していることは忘れないけれど、それとは別に新しいことを始めてもいいかな、と。

就職しないで生きる方法は、「絶対に諦めないこと」「自分がいちばん得意とする何か、他人が喜んでくれることで自分もうれしくなる何か。いちばんにはなれないけれど自分にはこれしかできない何か」をやることだとある。私の場合お金を稼ぐことは難しいけれど、とりあえず組織に属さずに好きなことをやってやろうと考えた。

句会などの趣味の会ですら息苦しくなってしまう私、団体行動の苦手な私の生き方はこれしかないと思った。

それでやっぱり「本に関わる仕事」がしたい。

そんなふうに私の気持を広げてくれた本である。

①「思いついたことはすべてやる」

 「僕は弱い人がどうやったら幸せになれるのかを考えて、そこからはじめたい。何も持っていなくても、何か始められるはずだと思う。常識に縛られないで、今の自分にできることから始めればいいんだ」

私の場合実際やってることは発表の当てもない文章をコツコツつむぐことだけなのにおこがましいかも知れないが、でも、志は持っていたいと思う。失うものは何もないのだから、好きにやってみたい。

②「セカンド・バースデイ」

「僕にとって大切な人を傷つけないことが、僕ができる『正しいこと』だと気づいた」、それが著者の「セカンド・バースディ」。

大きな気づきの瞬間が「セカンド・バースディ」だ。私は松浦さんとは違っていて、自分にイエスと言った日が「セカンド・バースディ」だ。これからいろいろ経験して、自分のために行動して、その後死ぬまでに「大切な人を傷つけないことが正しいこと」という境地に達することができるといいな。でも、今の私にとっては、自分を否定しないことだけで精いっぱいだ。

③「地図は自分で歩いて作る」

 松浦さんの旅のしかたが好きだ。「何がしたくて旅に出かけるのかというと、静かに考える時間を持ちたいから」「誰かに連れられて歩くことほど不幸なものはない」「旅先で一番最初に探すのは、居心地の好いカフェである」。もう、それそれ! です。