トマト丸 北へ!

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元気で明るい新感覚の「シンデレラ」実写版

現代風のミュージカル映画

このシンデレラはドレスデザイナーになるという夢を持っている。彼女の地下室の部屋は工房になっていて、壁には一面彼女のデザイン画、テーブルの上には作りかけのドレス。階上に上がれば親切ごかしの継母にこき使われる忙しい生活だが、この部屋では三匹の鼠と夢が彼女を温かく包んでいる。このシンデレラは王子様を待ってなどいないのだ。

継母は女には結婚しかないという考えの持ち主。実の娘たち二人にもそう教え込んでいる。

シンデレラは、実は自信がなく楽しくない姉たちにさえ親切にできる。彼女はいい人間で、自分が打ち込む夢を持っているからだ。

人は彼女の夢を笑うが、シンデレラは諦めない。しかし現実は「女は店が持てない」「女は家にいろ」というタリバン支配下のような体制が彼女の足を引っ張っている。

このストーリーの中で彼女を引き上げてくれるのは黒人の女王であり、王子はむしろ添え物のようだ。シンデレラが王子に魅かれる理由と言うのも、ハンサムでやさしく馬に乗って現れるというたわいのないもので、この二人、結婚して大丈夫かいなと心配になる。

たしかにお妃になって儀式の飾りと王子を生むという役目以外にすることもなく城に閉じ込められる生活よりは、ドレスデザイナーとなって世界を回るほうがずっと楽しいだろう。苦労も多いだろうが、「生きる」ことができる。シンデレラはそれでいいが、王子はどうだろう? でもカッコよく気品もあるから、トップモデルになれるかも。

このシンデレラの物語では、シンデレラだけでなく継母、姉たち、王子とその妹の王女、王子の父母である王と女王も人生前向きに変わっていくのである。めでたしめでたしでは終わらず、これからみんな苦労しそうだ。

でも、人間って、なにも苦労がなくべんべんと日を送るよりは障害をひとつひとつ乗り越えて行く方が楽しいのではないだろうか。

別の話になるが、やんごとなきM子様も、苦労がしたい、自由がほしいのだと思う。たしかに彼女の選んだ人は堅実な性格ではないかもしれないし、嫁姑問題で苦労しそうなのは目に見えている。でも彼女は自分の人生を生きたいのだ。誰も人の生き方を誹謗中傷してはならないと思う。

みんな、元気でがんばって行きましょう! という元気の出る映画でした。