トマト丸 北へ!

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これはおもしろい! COMIC『目が覚めたら投獄された悪女だった』

このところキンドルアンリミテッドのノベルにハマっている。寝る前の読み物に最適。

肩が凝らず、楽しく読めて後味も良い。ほとんどの作品がハッピーエンド確約なので安心して読めるのだ。そしてタダなのも安心。

その中でめっちゃ面白かった作品の一つ。

 

伯爵令嬢ソフィアは、母亡き後継母と妹に虐待されていた。物置同然の小屋に住まわされ、食事も粗末な物。夏も冬も同じボロボロのドレスを着せられていた。彼女の趣味は「薬草の研究」だ。心優しいソフィアはそんな生活でも誰を恨むこともなく、薬草三昧の生活を堪能していた。

「寂しいけれど仕方がないことだ。何かを恨んだところで自分の境遇は変わらない」と考えていた。

ところがある朝目覚めると彼女は高い塔の中の牢獄に囚われており、姿かたちも別人になっていた。視線だけで人を震え上がらせるという悪女、公爵令嬢(伯爵より高位)ヴァイオレットと体が入れ替わっていたのだ。

戸惑うソフィアだったが、塔の囚人の生活は三食おやつ付き、ふわふわのベッドという元の生活に比べれば天国のような待遇だ。

しかも監視役(お世話係?)のクロード・ブラッドリー22歳は王太子直属の第一騎士団の団長で黒髪の美形なのだ。

一方のヴァイオレットはある目的を果たすついでにソフィアの伯爵家で極悪な家族をこらしめるのだった。

「引きこもりの天才薬師令嬢と魔術を操る妖艶な稀代の悪女コンビの痛快倍返しファンタジー」である。

この物語の魅力はもちろんダブル主演のソフィアとヴァイオレットの魅力だ。

ソフィアはお人好しなところがなんとも可愛い。

しかし悪女ヴァイオレットはそれ以上にチャーミング。

淡い金色の髪、紫の瞳、完璧なスタイルを誇るヴァイオレット・エルフォード公爵令嬢は、国王の姪という高貴な血筋、加えて強い魔力と人並外れた知力胆力を併せ持つ。

その気の強さと専横とも言える振る舞い、傲慢、強欲、享楽的な性格に加え、一度敵対した者に対する報復の酷さで恐れられている。その視線を向けられるだけで人は震え上がる。

かつてヴァイオレットのドレスの裾を踏んだ令嬢の家は没落させられ、一家離散の憂き目を見たとも噂されているのだ。

誇り高い彼女の一人称は「この私」、相手を呼ぶときは、たとえ相手が王太子であろうとも「お前」、なのである。

その彼女が単身巨悪に挑む。巻き込まれるソフィア。「ざまあ」の系列ではありながら単なる復讐ではなく二人の魅力的な若い女性の成長譚でもある。

話の展開は述べないが、けっして後悔しないノンストップの面白さだ。