漫画; 井村なるみ
原作; 桜井ゆきな
登場人物とあらすじ;
アスター侯爵のひとり娘デイジーは、第一王子のフレディと婚約していた。
母亡きあと父侯爵は遺言の「デイジーを世界一幸せにしてください」を守ろうとして見当違いの努力を重ね、娘と向き合うことをかたくなに拒否していた。しかしデイジーは父を慕い、父の命令に従順に従ってフレディのよき婚約者たらんと努力していた。
あるときフレディは重い病に倒れる。昏睡状態が続く中呼び出された「聖女」(子爵令嬢ルーラ)はその祈りで王子を救う。回復したフレディは聖女ルーラを運命の人と信じデイジーとの婚約を破棄、ルーラと婚約する。
ルーラへの「真実の愛のため」にあっさりと自分を捨てたフレディ王子。デイジーは自分の今までの努力はいったい何だったのかと絶望する。
そんなとき、それまでデイジーの助力でなんとか王太子候補として仕事をこなしていたフレディは自分ひとりでは力不足だということを思い知る。ルーラも虚栄心と劣等感が強いだけで聖女としての自覚も低く、王太子の婚約者となるなんの準備もできていないのだった。
デイジーの心など思いやってもみない父侯爵と身勝手なフレディ王子は、デイジーを「側妃」にしようと企む。デイジーへの愛はないが、めんどうな仕事だけはやってもらおうという考えのフレディ。父侯爵も王妃になれないなら「側妃」でも十分幸せになれるはずだと考えていた。
第二王子ジェイクはデイジーの真価を知っており、好意も抱いていたのでデイジーに同情する。デイジーはジェイクにもらった秘薬で仮死状態になり、意識はありながら眠り続ける間に周囲の人々の自分への愛情に気づくと共に父侯爵とフレディ王子の冷たさも思い知らされるのだった。
目覚めたデイジーは「これからは自分のために生きよう」と決意するのだった。
デイジーの決意の言葉;
「お父様と過ごす時間は私にとって苦痛の時間だったのだとようやく気づきました」
「私の心を殺してまでもお父様に……自分に関心がなく、私のことを道具としか思っていない人間に無理をして寄り添う必要はない。ようやくそのことに気づきました」
総括; この後デイジーはフレディの側妃になることをきっぱりと拒絶し、真に自分を
愛してくれるライアンと結ばれる。父アスター侯爵やフレディが知ろうともしなかっ
た、「デイジーの好きな物」(フリージアと曇り空とローストチキン)をライアンは
ちゃんと覚えていた。
抑圧されていると自分で自分の気持がわからない。彼女に残酷な仕打ちをするフレ
ディや父侯爵より以上に、デイジーは自分で自分を虐待していたのだ。そのことに、
気づかなかった。
書き抜いた二つのセリフはけっこう私の心に刺さった。
自分を利用するだけの人間を見抜くことはだいじなことだと思う。