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久しぶりに紙の本を読む。
老眼のせいでキンドルやオーディオブックが楽なのだけれど、やっぱり紙の本が与えてくれる「読書感」は捨てがたい。
中学三年生の月沢陸真は読書好きだ。学校帰りに駅前の総合公益施設の中にある図書館に通うのが日課である。
その日、陸真はふしぎな女性に会う。その女性はけん玉の赤い玉を紐なしで操り、分単位で局所の天気を当てて見せる。
父一人子一人の陸真が暮らすアパートに、その夜父は帰らなかった。
この小説は、陸真が図書館で会った不思議な「魔女」と親友の宮前純也の3人で父の死の秘密を探る七日間の物語だ。
この小説の中で一番好きな箇所は、
p120 「多摩川を右に眺めながら爽快にペダルを踏んだ。~同情なんかはされたくない。かわいそうだなんて思われたくない。
この先ーたとえば夏休みが明けるころには違う毎日が訪れるのかもしれない。近いうちに児童相談所から連絡が来て、児童養護施設に預けられることになるだろう。そうなれば、もしかすると転校しなければならないかもしれない。純也とも今のようには会えなくなる。
そうなった時でも、決してかわいそうな少年には見られないようにしようと思った。笑顔で転校していくのだ。純也とも笑って別れるのだ。」
「笑顔で転校していくのだ」という潔さ! この少年が好きになる一瞬だ。物語の中に好きな人物、共感できる人物がいると読むのが楽しい。
謎解きのおもしろさ、展開の巧みさにどんどん引き込まれて一気に読んでしまうが、東野圭吾の小説には何気ない文章の中にキュンと引き込まれる個所がある。こんなふうに「好き!」という部分があると、登場人物が友人の一人になるのだ。
また、近未来のものと思われる先端科学的な設定もあるが、違和感なく楽しめる。実際にこういう研究がどこかでもう行われているのかもしれないという気もする。
めっちゃ楽しい一日となった。本を読むことが休日であり旅である。