いつもながら五味太郎さんの表紙がめっちゃいい。
加藤登紀子さんの巻頭エッセイ「どんな瞬間にも俳句は生まれる」
寒河江善秋さんのエピソードが良かった。
太平洋戦争の末期、南方の戦地で「戦争をすれば死ぬだけだから、出来るだけ戦わない」という方針を立て、暇な時間に俳句の会を開いたという人だそうだ。亡くなる直前にも「寝汗のシャツ脱ぐとき鳴くやテテッポッポ」と詠んだという。
「戦争の真っ最中も、この世を去る瞬間も俳句を捻っていた! その生き方に『素晴らしい!』と声を上げるほかはありません。」とある。
こういう人がいたんだなと知っただけで心が広々する気がする。
「源氏物語に登場する春から夏の花」という特集も良かった。
若紫が登場する場面の文章が引かれていたが、源氏の中で私のいちばん好きな部分だ。
「雀の子を犬君が逃がしつる!」という可憐な声と姿が眼前にありありと見えるようだ。その印象が「山桜」に譬えられているのもいかにもとしっくり来る。
蕪村の句「菜の花や月は東に日は西に」の月は満月だと木暮陶句郎さんの文章を読んで知った。改めて蕪村のスケールの大きさ、物を観る目の確かさを思う。
村上鞆彦さんの「類想をおそれて縮こまらずに」という指摘には励まされた。
「類想」だけでなく、こんな句を作ったらバカにされないかしらと出来る前から腰が引けている。へんてこだと言われるのが怖くて、結局どこかで聞いたような俳句しか残らない。俳句を作るのはけっこう勇気がいることなのだ。「縮こまらずに」を覚えておこう。
鴇田智哉さんの「風景と体を結びつける」も「こんなふうに作っていくのか!」と参考になった。最初にふっと浮かんだフレーズを流してしまわず、いろいろな物とぶつけてみる。頭の中で化学実験をしているみたいだ。
四月号わたしのベスト俳句
海の燦の一片となりウスバカゲロウ 高野ムツオ
胸がきゅんきゅんする。