言うまでもなく三年前に大関から序二段に転落してからの奇跡の復活だ。大関への復帰も確定。素晴らしい返り咲きの場所となった。
その苦労や味わったであろう屈辱は私でも想像できる。底の底から這いあがったガッツと忍耐力に励まされる思いがする。たぶん、相撲ファン全員の心に灯を灯す優勝だったのではないか。
勝ち進むにつれて優勝できるのではないかという望みが生まれ、同時に「ほんとうにできるのか」という不安も湧いてきたはずだ。しかし照ノ富士はその不安を外には見せなかった。見せたのは、「一番一番を全力で取る」という固い決意だった。迷いがなかった。そこが素晴らしいと思う。
序二段に落ちた時諦めなかったこと、毎日のけいこ、不安を打ち払い取り続ける決意、その一つ一つが彼を強くしていったのだと思う。優勝も大関復帰も結果であって、彼の本当の勝利はこれまでの毎日毎日の新たな決意と奮闘にあるのだと思う。
迷わず(もちろんあったとしてもそれを振り切って)努力した三年半があってこその今場所の迷いのない闘志あふれる表情なのだ。勇気をもらった。