トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

2022-01-01から1年間の記事一覧

吉本ばなな『ハネムーン』 中公文庫

P7 私はそこを大切に思い、子供の時は服のままで地面にすわったり寝転んだりしていた。やがて大人になってからは、きちんと敷物を敷いて飲み物を持って、ひまさえあれば坐っていた。 もう、これだけでこの小説が好きになる。こういう場所があったら、もうそ…

小野不由美『風の海、迷宮の岸』 十二国記 新潮文庫

『魔性の子』の高里の幼少期。 高里要を憎む狭量で高圧的な祖母は理不尽な躾を繰り返していた。要をかばう母は祖母に叱責され、いつも泣くのだった。父はもとより子どもの心情を理解するような人物ではなかった。 ある夕暮れ、要はいたずらを正直に白状しな…

テレビドラマ「ミステリと言う勿れ」21日第7話

菅田将暉の久能整が良くて良くて、毎回楽しみに観ている。今夜の第7話は格別で、ぞくぞくするほど。一つ一つの場面が心に沁みた。 早乙女太一演じる井原香音人の美しさ、そこに居るのに現実感のない儚い感じ。ほんとうにうまい。コロナが終わったら、ぜった…

テレビドラマ『高慢と偏見』と映画2本

PRIDE and PREJUDICE 1995年 イギリス制作 原作 ジェーン・オースティン 脚本 アンドルー・デイヴィス 監督 サイモン・ラングトン キャスト エリザベス・ベネット ジェニファー・イーリー フィッツウィリアム・ダーシー コリン・ファース このドラマを観て原…

小野不由美『月の影 影の海』上下 十二国記 新潮文庫

一気に読んだ『十二国記』の三、四冊目。これがまたまためっちゃおもしろいのだ。 平凡な事なかれ主義の高校生陽子は毎夜、妖獣の群れに追われる夢を見る。最初ははるか彼方の地平線のあたりに淡い炎のように見えていた妖獣たちは夜を重ねるにつれてしだいに…

小野不由美『魔性の子』 十二国記 新潮文庫

めっちゃおもしろい。『魔性の子』に続く『月の影 影の海』上下を一緒に買っておいて正解だった。すぐに次が読みたくなり、読み始めると止まらないやつ。後書きで菊地秀行さんや北上次郎さんも絶賛しておられたので、我が意を得たりとうれしい。面白い本は後…

岸本尚毅 夏井いつき『ひらめく! 作れる! 俳句ドリル』 祥伝社

俳句の20冊、3冊目も夏井いつき本。 ドリルと銘打たれているだけあって実践問題が多々出題されていておもしろく、また頭ぐるんぐるんのハードな学習となった。 これを読んで、今まで自分がいかに頭を使っていなかったか、思い込みにとらわれていたか、よ…

瀧島未香『タキミカ体操』 サンマーク出版

この本を開いてまず気に入ったのが製本。「中綴じ」と言うのだろうか、見開きにするとぺたんと平らになる。体操の図解が見やすく、横に置いて見ながら体を動かすのに便利だ。こういうところに作り手の心遣いが表れていると思う。 買ったのは、表紙のタキミカ…

エリック・ヘミングソン『減量の正解』 下倉亮一(訳)

原題は ”THE END OF DIETING” 。 私の「最後のダイエット」のテキストである。 ほんとに体重が減らない。年を取ったせいもあると思う。今までは10㎏くらいすぐに減っていた。そしてまた太る。「風船みたいに膨らんだりしぼんだりするね」と言われたものだ。…

一般女性は転んでも立ち上がって人生を歩き続けるーSATCキャリーの魅力

朝食はキャリーたちと一緒だ。U-NEXTで"Sex and the City"を観ながら食べてる。だいたい一本観るけれど、途中まででもかまわない。彼女たちの生き方、ファッション、表情、それぞれの個性が大好きだから「上がる」。ちょっとだけ英語の聞き取りの練習になる…

柳美里『飼う人』 文春文庫

「生き物を飼うことは『祈り』に似ている」という帯の文に惹かれて買った本。 解説の岡ノ谷教授は「飼うことは自分を見つめることである」と書かれている。 寝る前に読む本がなくて一回読んで積んであったのを手に取って見ているうちに、ふと思ったのは、実…

森知子『カミーノ!』 幻冬舎文庫

「女ひとりスペイン巡礼、900キロ徒歩の旅」 サンティアゴ巡礼、いつか行くつもりでいる。四国のお遍路も途中までで終わってしまったが、ぜったいに再挑戦、完歩する。 巡礼の本をよく手に取るのだが、あまりおもしろくない。細かいことを書きすぎていた…

東野圭吾『時生』 講談社文庫

「 自分には重大な任務が残っていたことを思い出した。 ~中略~ これを忘れてはならない。最も大事なことだ。これを伝えなくては、彼の新たな旅 は始まらないー。 宮本は声をかぎりに叫んだ。 『トキオっ、花やしきで待ってるぞ』」 物語の結びのこの文章が…

『高慢と偏見』ななめ読み

『高慢と偏見』ジェーン・オースティン 岩波文庫 ベネット家の母の人生の目標は5人の娘たちにいい結婚をさせること。 この小説の中で3人が結婚。一人はベネット氏の好意は得ているがやや難ありのとても人間らしい男。5人の娘たちの中で最も美しい長女ジェ…

『野上弥生子短編集』 岩波文庫

1885年生まれの小説家。『真知子』『秀吉と利休』など。 解説に漱石に作品をみてもらったことが書いてあった。漱石って教師をしていたからか、人を育てることが好きだったのかなと思う。近所の少年に英語を教えてくれと頼まれてちょっと教えてあげるエピ…

柳美里『JR品川駅高輪口』 河出文庫

「あなたは 死にたい人?」 SNSで知り合う自殺志願者たち。その小さな人の輪は首括りの縄に似ている。 家庭にも学校にも居場所の無い少女が、ゆるやかに締まっていくその輪の中で自分をみつめている。 「うざい」とか「アホちゃうか」とか冷たいことばも混ざ…

おならはOK?

「セックスアンドザシティ」でキャリーがビッグと居るときにおならをしてしまうシーンがある。キャリーは狼狽し、ビッグは笑う。 その数日後またやってしまう。「もう女としての緊張感がなくなってしまった」とキャリーは嘆く。しかし「いつまでもうじうじし…

「あきらめる」の考察

山崎ナオコーラさんが「あきらめる」という言葉が好きだと書いておられた。 私はあきらめるのが嫌いだ。変に意地っ張りなところがある。損切ができない。 ナオコーラさんはなぜ「あきらめれる」という言葉が好きなのかなと考えて、私なりに納得したのでそれ…

山崎ナオコーラ『文豪お墓まいり記』 文春文庫

ナオコーラさんが日本の近代文学の巨匠たちの墓参りをするという、ショートトリップエッセイ。都内や関東近郊のお墓が多いので、行ってみようかなという気にもなる。 文学案内だがガイドブックではなく、ナオコーラさんの身辺の話が適度にちりばめられている…

トンイ

脚本 キム・イヨン 監督 イ・ビョンホン 今、朝食時は「セックスアンドザシティ」、夕食時は「トンイ」を観ている。キャリーたちと朝食、トンイと夕食。まるで家族のようだ。U-NEXT、けっこういい。 今全60話のうち40話くらいまでトンイを観ている。以前…

柳美里『JR上野駅公園口』 河出文庫

後書きがすごく参考になった。天皇制とホームレスの対比にまで私は考えが及ばなかった。 P55 光は照らすのではない。照らすものを見つけるだけだ。そして、自分が光に見つけられることはない。ずっと、暗闇のままだ。 ホームレスになっている人には東北から…

チェーホフ『ワーニャ伯父さん・三人姉妹』 光文社古典新訳文庫

「ワーニャ伯父さん」 大学教授の義理の兄(妹の夫)のために領地を管理してせっせと仕送りしてきたワーニャ伯父さん。教授の娘(つまりワーニャ伯父さんの姪)と共に教授に尽くす半生だった。 ワーニャ伯父さんの妹は亡くなり、教授は再婚した若いエレーナ…

山崎ナオコーラ『かわいい夫』 夏葉社

山崎ナオコーラと柳美里との出会いは私の「2021年の出会い」ベストテンに入る。 その山崎ナオコーラ著で装画が(あの懐かしい)みつはしちかこ というエッセイ集。 この作家は読者との距離の取り方が絶妙だ。ポーズが素敵、と言ってもいいかもしれない。文体…

泉鏡花『夜叉が池・天守物語』 岩波文庫

泉鏡花の戯曲。 「夜叉が池」 人里離れた山中で寄り添うように暮らす百合と晃。寺はとうの昔に焼失しているが今も残っている鐘楼があり、その鐘を朝夕晩の三度つくことをなりわいとしている。それは村を水害から守る竜神との約束のためだった。鐘をつかない…

マン『トニオ・クレーガー』浅井晶子訳 光文社古典新訳文庫

この小説を知ったのは、北杜夫さんの青春の書としてだった。そのとき「トニオ・クレーゲル」となっていたので、クレーガーとあるのがどうもしっくり来ない。翻訳だとどうしてもこういうことになる。『赤毛のアン』も、私のアンは昔の村岡花子さんの訳であっ…

和田秀樹『70歳が老化の分かれ道』詩想社新書

60歳以上はひとからげになってる本が多い中で「70歳」という年齢に着目して述べられているところが斬新な気がした。 今は老後が長いし、老年の間での格差も大きい。デビ夫人のような女性がいる反面私のように年相応、順調に老いの坂を下っている人も存在…

志賀直哉『万暦赤絵』 岩波文庫

自選による23篇の短編集。 久々の志賀直哉だ。卒論に書こうと思って全集を買ったくらい、一時は好きだった。 ほとんど読んでいるはずなのだが、ほとんど思い出せない。どこに惹かれたのかも今となっては定かではない。半世紀近く経っている。もう初めて読…