トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

エリック・ヘミングソン『減量の正解』 下倉亮一(訳)

原題は ”THE END OF DIETING” 。 私の「最後のダイエット」のテキストである。 ほんとに体重が減らない。年を取ったせいもあると思う。今までは10㎏くらいすぐに減っていた。そしてまた太る。「風船みたいに膨らんだりしぼんだりするね」と言われたものだ。…

一般女性は転んでも立ち上がって人生を歩き続けるーSATCキャリーの魅力

朝食はキャリーたちと一緒だ。U-NEXTで"Sex and the City"を観ながら食べてる。だいたい一本観るけれど、途中まででもかまわない。彼女たちの生き方、ファッション、表情、それぞれの個性が大好きだから「上がる」。ちょっとだけ英語の聞き取りの練習になる…

柳美里『飼う人』 文春文庫

「生き物を飼うことは『祈り』に似ている」という帯の文に惹かれて買った本。 解説の岡ノ谷教授は「飼うことは自分を見つめることである」と書かれている。 寝る前に読む本がなくて一回読んで積んであったのを手に取って見ているうちに、ふと思ったのは、実…

森知子『カミーノ!』 幻冬舎文庫

「女ひとりスペイン巡礼、900キロ徒歩の旅」 サンティアゴ巡礼、いつか行くつもりでいる。四国のお遍路も途中までで終わってしまったが、ぜったいに再挑戦、完歩する。 巡礼の本をよく手に取るのだが、あまりおもしろくない。細かいことを書きすぎていた…

東野圭吾『時生』 講談社文庫

「 自分には重大な任務が残っていたことを思い出した。 ~中略~ これを忘れてはならない。最も大事なことだ。これを伝えなくては、彼の新たな旅 は始まらないー。 宮本は声をかぎりに叫んだ。 『トキオっ、花やしきで待ってるぞ』」 物語の結びのこの文章が…

『高慢と偏見』ななめ読み

『高慢と偏見』ジェーン・オースティン 岩波文庫 ベネット家の母の人生の目標は5人の娘たちにいい結婚をさせること。 この小説の中で3人が結婚。一人はベネット氏の好意は得ているがやや難ありのとても人間らしい男。5人の娘たちの中で最も美しい長女ジェ…

『野上弥生子短編集』 岩波文庫

1885年生まれの小説家。『真知子』『秀吉と利休』など。 解説に漱石に作品をみてもらったことが書いてあった。漱石って教師をしていたからか、人を育てることが好きだったのかなと思う。近所の少年に英語を教えてくれと頼まれてちょっと教えてあげるエピ…

柳美里『JR品川駅高輪口』 河出文庫

「あなたは 死にたい人?」 SNSで知り合う自殺志願者たち。その小さな人の輪は首括りの縄に似ている。 家庭にも学校にも居場所の無い少女が、ゆるやかに締まっていくその輪の中で自分をみつめている。 「うざい」とか「アホちゃうか」とか冷たいことばも混ざ…

おならはOK?

「セックスアンドザシティ」でキャリーがビッグと居るときにおならをしてしまうシーンがある。キャリーは狼狽し、ビッグは笑う。 その数日後またやってしまう。「もう女としての緊張感がなくなってしまった」とキャリーは嘆く。しかし「いつまでもうじうじし…

「あきらめる」の考察

山崎ナオコーラさんが「あきらめる」という言葉が好きだと書いておられた。 私はあきらめるのが嫌いだ。変に意地っ張りなところがある。損切ができない。 ナオコーラさんはなぜ「あきらめれる」という言葉が好きなのかなと考えて、私なりに納得したのでそれ…

山崎ナオコーラ『文豪お墓まいり記』 文春文庫

ナオコーラさんが日本の近代文学の巨匠たちの墓参りをするという、ショートトリップエッセイ。都内や関東近郊のお墓が多いので、行ってみようかなという気にもなる。 文学案内だがガイドブックではなく、ナオコーラさんの身辺の話が適度にちりばめられている…

トンイ

脚本 キム・イヨン 監督 イ・ビョンホン 今、朝食時は「セックスアンドザシティ」、夕食時は「トンイ」を観ている。キャリーたちと朝食、トンイと夕食。まるで家族のようだ。U-NEXT、けっこういい。 今全60話のうち40話くらいまでトンイを観ている。以前…

柳美里『JR上野駅公園口』 河出文庫

後書きがすごく参考になった。天皇制とホームレスの対比にまで私は考えが及ばなかった。 P55 光は照らすのではない。照らすものを見つけるだけだ。そして、自分が光に見つけられることはない。ずっと、暗闇のままだ。 ホームレスになっている人には東北から…

チェーホフ『ワーニャ伯父さん・三人姉妹』 光文社古典新訳文庫

「ワーニャ伯父さん」 大学教授の義理の兄(妹の夫)のために領地を管理してせっせと仕送りしてきたワーニャ伯父さん。教授の娘(つまりワーニャ伯父さんの姪)と共に教授に尽くす半生だった。 ワーニャ伯父さんの妹は亡くなり、教授は再婚した若いエレーナ…

山崎ナオコーラ『かわいい夫』 夏葉社

山崎ナオコーラと柳美里との出会いは私の「2021年の出会い」ベストテンに入る。 その山崎ナオコーラ著で装画が(あの懐かしい)みつはしちかこ というエッセイ集。 この作家は読者との距離の取り方が絶妙だ。ポーズが素敵、と言ってもいいかもしれない。文体…

泉鏡花『夜叉が池・天守物語』 岩波文庫

泉鏡花の戯曲。 「夜叉が池」 人里離れた山中で寄り添うように暮らす百合と晃。寺はとうの昔に焼失しているが今も残っている鐘楼があり、その鐘を朝夕晩の三度つくことをなりわいとしている。それは村を水害から守る竜神との約束のためだった。鐘をつかない…

マン『トニオ・クレーガー』浅井晶子訳 光文社古典新訳文庫

この小説を知ったのは、北杜夫さんの青春の書としてだった。そのとき「トニオ・クレーゲル」となっていたので、クレーガーとあるのがどうもしっくり来ない。翻訳だとどうしてもこういうことになる。『赤毛のアン』も、私のアンは昔の村岡花子さんの訳であっ…

和田秀樹『70歳が老化の分かれ道』詩想社新書

60歳以上はひとからげになってる本が多い中で「70歳」という年齢に着目して述べられているところが斬新な気がした。 今は老後が長いし、老年の間での格差も大きい。デビ夫人のような女性がいる反面私のように年相応、順調に老いの坂を下っている人も存在…

志賀直哉『万暦赤絵』 岩波文庫

自選による23篇の短編集。 久々の志賀直哉だ。卒論に書こうと思って全集を買ったくらい、一時は好きだった。 ほとんど読んでいるはずなのだが、ほとんど思い出せない。どこに惹かれたのかも今となっては定かではない。半世紀近く経っている。もう初めて読…

夏井いつき『赤ペン 俳句教室』 朝日出版社

俳句の20冊の2冊目。 また夏井先生の本を読む。弟子でもないのに先生呼ばわりはおかしいかもしれないが、「著者」と書くのも違う気がするので。 P28 俳句の宿命は類想類句との闘い 前の本でも書いたけれど、意識してこれをやっていなかったなんて、ほんと…

夏井いつき『世界一わかりやすい 俳句の授業』PHP

行き詰まりかけている私の俳句人生を再スタートするために、困ったときは関連の本を20冊読むというポリシーに従って読み始めた俳句本20冊の1冊目。 「はじめに」にこうあった。 P3 俳句には、人を救う力がある。 起こってしまったことは仕方ない。転ん…

神田まつや天もり

久々の神田。まつやに直行だ。 丸の内線淡路町A1出口を出て右手に歩道橋を見たとき、こっちだなと直感した。方向音痴のアタシが忘れていた道を間違いなくたどり着く、そんな店である。 三十人くらいの行列。最後尾について10分後くらいに熟年女性の2人連…

中谷彰宏『なぜかHAPPYな女性の習慣』 だいわ文庫

3つの気づき。 ①1秒たてば、過去。 「スイッチを切るだけでいい」とある。 今しかないのだ。 この年になると時間がとても貴重に思える。なぜ今まで気づかなかったのかと不思議なくらいだ。嫌な奴と過ごす時間、そいつを思い出してる時間、そういうのもほん…

上沼恵美子さんの「別居婚」に学ぶ

上沼恵美子さんが大好き。その話芸は絶品だ。 同じことを何度話しても、上沼さんだとめっちゃ楽しい。おもしろい。NHKの土曜日の番組に出ておられたころは楽しみだった。実家が大阪城、というような壮大な自慢?話がほんとに楽しかった。話し方も好きだし、…

新庄「ビッグボス」、「そうですね」は要らない という教え。

新庄が若い選手に、インタビューのときの「そうですね」は要らないと教えたそうだ。 「いいことを言おうと思うな。感じたことを素直に言えばいいんだ」 この言葉を覚えておこうと思う。 11月のブログなどのUP数が少なかった理由がここにある。「いいことを…

遠藤周作『深い河』講談社

インドツアーの一行4人にまつわる物語。その中の一人美津子とその学生時代の友人大津が芯となって語られる。 癌で妻を失った磯部は、献身的だった妻を顧みなかったという後悔から、妻の最後の望み「転生して再び磯部に巡り合いたい。必ず探してほしい」を叶…

オスカー・ワイルド『サロメ』 岩波文庫

分封ユダヤの王エロドは、兄の死後その妻だったエロディアスと結婚している。 予言者ヨナカーンはエロドを非難するが、王は予言者を恐れているので殺そうとはしない。 囚われのヨナカーンを恋して言い寄るエロディアスの連れ子サロメがこの戯曲の主人公だ。 …

西原理恵子『洗えば使える 泥名言』文芸春秋 (再読)

「やり逃げ人生」「ばっくれ人生」を座右の銘とする西原理恵子先生の味わい深い、偉人・成功者ではない人たちの名言集。 私はこの西原理恵子さんが大好き。友達になれるかはわからないけれど、書いたものを読んでも、テレビCMなどで見ても、可愛くてたまらな…

JR御茶ノ水駅から散歩 ⑴

御茶ノ水駅から湯島聖堂へ向かって歩いてみました。気が付いたのは、「湯島聖堂」と「湯島天神」とは別物だということ。田舎者なんで、知りませんでした。 上の写真は昌平坂。昌平坂も三つあり、一つは「相生坂(昌平坂)」となっていました。湯島聖堂を囲む…

『炉辺のこほろぎ』 ディケンズ作 本多顕彰訳

ジョン・ピアリビングルとメアリの夫婦の愛の物語。とても後味の良い話だ。 メアリのキャラクターがとても魅力的。明るく無邪気で疑うことを知らないかのようだ。彼女の賢さは他人を追い落としたり権力をふるうためのものではなくて、平凡な生活に命と愛を吹…