トマト丸 北へ!

本と映画、日々の雑感、そしてすべての気の弱い人たちへのエールを

『炉辺のこほろぎ』 ディケンズ作 本多顕彰訳

ジョン・ピアリビングルとメアリの夫婦の愛の物語。とても後味の良い話だ。 メアリのキャラクターがとても魅力的。明るく無邪気で疑うことを知らないかのようだ。彼女の賢さは他人を追い落としたり権力をふるうためのものではなくて、平凡な生活に命と愛を吹…

『夢で会いましょう』 村上春樹/糸井重里 講談社文庫

m; その象はとても素敵なハイヒールをはいて地下鉄に乗っていた。 I; 仮面というコトバは、世間からなくしたい。 急になくすと、へこみができるから、「おめん」とゆーものを代入してみようと 思う。 村上春樹と糸井重里がカタカナの言葉にエッセイや短文…

『クララとお日さま』 カズオ・イシグロ 早川書房 (ネタバレありです)

その辺の子どもよりうちの犬の方がテーブルマナーがいい。犬同伴のレストランでは、ほとんどの犬が静かに座っている中で騒いでいるのは人間の子どもたちであることが多い。性格だってある種の大人よりうちのマルのほうが穏やかで愛情深く、口数も少なく、可…

筑摩現代文学大系39「佐多稲子 林芙美子 集」

佐多稲子の作品は初めて読んだ。 『素足の娘』『灰色の午後』の2作品が収められている。 読後感は、体温が伝わってくる、だ。もっと言えば、隠蔽されたヰタ・セクスアリスのような感じだ。 年代的に性の話は率直にしないものだというのが染みついている。以…

『八月の光』 フォークナー 岩波文庫

リーナは寝室の窓から抜け出して男と会っていた。彼女の妊娠を知った男ルーカス・バーチは逃げ出す。しかし彼女は迎えに来るという男の言葉を信じていた。その迎えの知らせがないのは何か理由があるのだと解釈したリーナは行方も分からない男の後を追って、…

「アイリス・アプフェル 94歳のニューヨーカー」 2015年アメリカ ドキュメンタリー

ニューヨークに行きたい。これは千葉敦子さんの影響だ。フリーのジャーナリストだった千葉敦子さんは、乳がんを抱えてニューヨークへ移住した。人生が残り少ないと悟り、静かに療養する生活を選ぶのではなく、人生の新たなページを開き残りの一滴まで味わお…

『ヘンリー・ジェイムズ短編集』

『ヘンリー・ジェイムズ短編集』 大津栄一郎編訳 岩波文庫 「私的生活」 「私」は才能のない二流の人間。スイスのリゾートホテルで有名人たちと同宿となり、社交生活を楽しんでいる。メリフォント卿夫妻、文壇の大立者クレア・ヴォードレー、美人女優のブラ…

生き変わり死に変わりしないとわからないことがある

今週のお題「叫びたい!」 真子様と小室さんの結婚会見を観ていて、今まで思っていたことをまた思った。これはいじめだ。大勢の人たちが寄ってたかってこの二人を虐めている。 婚約会見以来の流れを、「壮大な恋愛劇場」と言っていたタレントがいるが、当人…

しびれるペンネームとセリフ回し 海音寺潮五郎

『堀部安兵衛』 海音寺潮五郎 鱒書房 剣豪新書 実家の姓の印が押されている古ーい本。父の蔵書だったものだ。 ワタクシの父は時代小説が好きだった。鱒書房、剣豪新書、なつかしい気がする。山手樹一郎が特に好きだった。「遠山の金さん」とか。講談本もたく…

北茨城市「松野屋」と「五浦観光ホテル」

北茨城の良いところ ①野菜がうまい サラダの野菜がめっちゃおいしい。新鮮、栄養、うまみがギュッと詰まってる。 千切りキャベツがこんなにおいしいなんて! ②魚がうまい なんでもない刺身がひとつひとつおいしい。 今回食べたのは「松野屋」の定食。北茨城…

馬瓜エブリン「報道ステーション」松岡修造インタビュー(11月1日)「足はなんのためにあると思いますか」

昨夜の「報道ステーション」、松岡修造のインタビューがすばらしかった。笑顔とその人の良さを100%引き出すインタビューだ。 バスケットボール日本代表の馬瓜エブリン。両親はガーナ人だが、日本で育った。東京オリンピックでの活躍が印象的だった。 長い手…

「フレイザー家の秘密」

U-NEXT で視聴。全6回。 原題は THE UNDOING 。「破滅」というような意味だと思う。 監督 スサンネ・ビア 脚本 デイビッド・E・ケリー グレイス・フレイザー ニコール・キッドマン ジョナサン・フレイザー ヒュー・グラント まず、タイトルバックの音楽と…

読書の秋はやっぱり宮部みゆき

今週のお題「読書の秋」 まだまだあるとは言っても読みつくしてしまうと楽しみがなくなるので、わざと間隔を置いて読んでいる宮部みゆきの本。禁断症状が出て来たのでついに手に取る。 『この世の春』上・中・下(新潮文庫) 時代物のミステリー仕立てという…

エリカ「最高の友は、私のなかから最高の私を引き出してくれる人である」

朝のテンションを上げるルーティンのひとつが、テンションの上がる本を読むこと。朝一番に良い言葉を入れる。今読んでいるのが、エリカ著『ニューヨークで学んだ「私を動かす」47の言葉」(宝島社)。 エリカは単身ニューヨークで起業し、成功した女性。E…

小林弘幸『自律神経が整えば休まなくても絶好調』 ベスト新書

この本はいい。とても実用的だと思う。 ①「休息は『動かないこと』ではない」と著者は言う。「坐り込まずに動いたほうが急速になる」。「休む」ということの内容を考え直したほうがいいという提案だ。 交感神経も副交感神経も共に高く維持されているのがいい…

東京ステーションギャラリー「小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌」展

久々の美術館。なんと「日時指定制」になっていた。ネットで申し込み、ローチケで購入。煩雑なようだが並ばなくて良いし、あまり混まないし、私にはけっこう快適だった。この制度をずっと継続してほしい。 小早川秋聲は、大正~昭和期の日本画家。今まで知ら…

秋の小さな旅

今日は半日の小旅行に出かけた。 大好きな鎌倉。半日なので、あちこちぶらぶらとはいかない。2年ぶりくらいの鎌倉だが、由比ガ浜の海を見て蕎麦、と的を絞った。ここまで来たらせめて長谷寺へは行きたいところだが、今回は我慢。 海は美しかった。房総の海…

旅は楽し『女・おとな旅ノート』

『女・おとな旅ノート』 堀川波著 幻冬舎 ずっと出かけられずにいたが、感染者も減ってきたみたいなので、浮かれて信州上田の戸倉上山田温泉へと繰り出した。 「清風園」、とてもいい旅館だった。ご飯がおいしい。特に米は最高だ。銘柄は忘れたが希少な地元…

めっちゃ脚本おもしろい「テレビドラマ代表作選集 2008年版」日本脚本家連盟

芸術祭賞などに入選した傑作脚本集。 久しぶりに脚本を読んだが、すごくおもしろい。小説よりむしろ脚本の方が、生き生きと映像が浮かんでくる分伝わってくるものがある。キャストも載っているのでビートたけしなどのしぐさや表情が目に浮かび、実際にドラマ…

眠れないときは起きる

今週のお題「眠れないときにすること」 いちおうお風呂に入り、暖かいミルクを飲み、常夜灯にしてお布団に入ります。 だいたい寝つきがいいと言うか、ふだんほとんど寝落ちする感じで意識を失うので、ここまでやっても眠れないということはめったにありませ…

「漂着者」も最終回

TV朝日 企画・原作・脚本 秋元康 ヘミングウェイ(漂着者) 斎藤工 新谷詠美(新聞記者) 白石麻衣 ローゼン岸本(しあわせの鐘の家代表) 野間口徹 野間(刑事) 戸塚純貴 住職 リリー・フランキー 柴田(刑事) 生瀬勝久 古市琴音 シシド・カフカ 藤沼(総…

「准教授・高槻彰良の推察」最終回、ベリーナイス

准教授・高槻彰良の推察EX (角川文庫) 作者:澤村 御影 KADOKAWA Amazon 原作 津村御影 角川文庫 脚本 藤井清美 伊藤崇 小学生のとき訪れた山奥の村で不思議な盆踊りに迷い込んでしまった尚哉は「孤独」という呪いをかけられてしまった。三つの飴の中からべっ…

さくらももこ『ひとりずもう』を読み、ももこさんの青春ににっこり

ひとりずもう (集英社文庫) 作者:さくら ももこ 集英社 Amazon 子ども時代からのことが書かれているが、漫画家になるまでの「青春記」と言っていいだろう。 これを読むと、さくらももこさんが単なるおもしろおかしい人ではなく、芯が強く自分をしっかり持っ…

池田晶子『残酷人生論』を読む

残酷人生論 作者:池田 晶子 毎日新聞社 Amazon この表題の「残酷」の意味はよくわからない。あまりこだわらなくていいのかなと思うことにしよう。 この本を読んで考えたことはこの3つだ。 ①社会と存在 「人間は社会的存在である」「人はひとりでは生きてい…

アンソニー・ホプキンスの『リア王』は、さすがの迫力

原作 ウィリアム・シェイクスピア 監督 リチャード・ギア リア王 アンソニー・ホプキンス ゴネリル エマ・トンプソン リーガン エミリー・ワトソン コーデリア フローレンス・ピュー ケント伯爵 ジム・カーター 少年少女版で読んだきりだったが、こうして映…

日本近代短編小説選 明治篇1 岩波文庫

12の短編が入っていて、なかなかの難物だった。名前だけは知っているがどんな作品があるのか知らない作家(幸田露伴など)の作品が読めてよかった。 明治という時代の熱が伝わってくる気もするし、隔世の感を抱きもする。でも、改めて読み直してみるのは良…

『大いなる遺産』鍛冶屋のジョーは悲しいほど良い人だ。

大いなる遺産(上) (岩波文庫) 作者:ディケンズ 岩波書店 Amazon 下巻を読むかどうかわからない、と始めに言っておく。 鍛冶屋のジョー・ガージャリーの妻であり自分の姉である「ねえちゃん」に「哺乳瓶で手厚く」育てられたピップの数奇(と言っていいだろう…

レイチェル・カーソンの名著『センス・オブ・ワンダー』ー生きていくためにシニアにこそ必要なもの

センス・オブ・ワンダー(新潮文庫) 作者:レイチェル・カーソン 新潮社 Amazon 美しい挿絵の入った小さな本。これは繰り返し読む本になると直感した。 p15 わたしたちは、嵐の日も、おだやかな日も、夜も昼も、探検に出かけていきます。それは、何かを教え…

「あたしはガンジーより中谷さん」な理由

あたしはガンジーより中谷さん。 ガンジー語録を読んだけれど、あまりにすごすぎて、1ミリも近づけない。自分独りの世過ぎをしかねているのにリーダーシップなんか取れない。社会の変革なんか目指せないと思った。こんな人が存在していたんだと、ガンジーを…

「ファーストラブ」ー男前な3人が少女の闇を開く

監督 堤幸彦 脚本 浅野妙子 原作 島本理生 ファーストラヴ 豪華版 [DVD] 北川景子 Amazon 父を殺したと自首した少女、聖山環菜(芳根京子)は心に深い闇を抱えていた。公認心理士の真壁由紀(北川景子)と弁護士庵野迦葉(中村倫也)は、一転二転する環菜の…